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なるほど!おいしさの『技』
 
15 Novembre 2003
その3 素材のパワー

宮本さやか







 イタリアで材料を買って料理を作ったことがある人なら、イタリアの野菜や肉や魚、といった素材が持つ力強さ大なり小なり驚かされたことがあるのではないだろうか。

 私の、目に入れても痛くもかゆくもない娘サラ・約三歳の大好物は「ブロッコリーあえのフジッリ」である。ブロッコリーの茎の部分も全部くたくたに茹でてつぶし、ニンニクとアンチョビの風味を付けたオリーヴオイルとまぜたものを、パスタに絡める。野菜をあまり食べなかった娘も、一歳の頃からこれさえ作れば絶対食べるという一品であった。ブロッコリーの出回る冬の間は少なくとも週に一度、多いときは二度、三度と我が家のテーブルに登場する。数をこなせば腕は上がる。私の「ブロッコリーあえフジッリ」は、もはやイタリア一、ひいては世界一ではないかとも思えるほどのおいしさの域に到達していた。

 ところが、日本へ里帰りしたときに作ってみると、なんだかおいしくないのである。世界一どころか、実家のある練馬一も怪しい感じだ。アンチョビもオリーブオイルもパスタも、イタリアマンマのように持参しているのに、なにかが違う。

 なぜであろうと考えてみると、まずニンニクが違うことに気がついた。イタリアではフライパンにたっぷり入れたエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルの中にニンニクを一かけ丸ごと入れるだけで、台所中がおいしい匂いになるのが普通だが、練馬で買ったニンニクは、無臭ニンニクなどではないのに一つでは全然香りが出ない。三つ入れてもなんだか情けない香りしかしない。

 ブロッコリーそのもののパワーも違うようだ。まず茹で時間が全然違う。イタリアのブロッコリーは小さく房に分けても、フォークで簡単につぶせる柔らかさになるには15分ぐらいはかかる。それに慣れた私は 10分たったあたりですでにぐちゃぐちゃに茹だっている日本のブロッコリーを見て焦る羽目になった。
果たして茹ですぎたブロッコリーは、全然味がない。日本人の母や弟はおいしいと食べてくれたが(もしかしたらお世辞かも?)、私には納得のいかない味だった。

ブロッコリーに限らず、イタリアの野菜はどれも味が強くておいしい。果物もしかり。太陽の力、土の力の違い、そしていまだに露地物が圧倒的に多いというのがその理由だろうか。そんな野菜で作るミネストローネは、日本のようにベーコンなどを入れなくても野菜だけでびっくりするほどいい味がでる。

 そういえばイタリアで、星付きの有名レストランに行って感動したことは数えるほどしかない。フレンチなんだかイタリアンなんだかわかりにくい料理は店を出たとたん何を食べたか忘れてしまうほどインパクトが弱い。一方無名の店だけれど、イタリア料理の素材の力強さ、おいしさみたいなものをガツーンと感じさせてくれる店は多い。野菜、そしてサラミやハムや、肉や魚のギューッと力のある素材とそれを愛している調理人がいた時にできあがるイタリア料理の力強さといったら、単純な一皿のパスタなりニョッキなりを何年たっても忘れさせないほどである。

 というわけで次回は、その力強い味を作り出すもう一方の主役、イタリアの素材を愛してやまない調理人の話である。  



       


著者プロフィール

宮本さやか(みやもと さやか)
東京生まれ。日本でフードライター兼フードコーディネイターなどをしていたが、95年、イタリア料理の腕に磨きをかけようとトリノに2ヶ月の短期留学。いればいるほどイタリア料理の奥の深さにはまり、そのまま居着いてしまう。その後、現在の夫と知り合い結婚、2歳7ヶ月の一児(さらちゃん)の母。現在もフードライターを続ける一方、イタリアで日本料理の講習やケータリングの企画なども手がける。最新刊『北イタリアでおいしいものを食べる、買う』(文化出版局刊)の他、『ピエモンテのしあわせごはん』(メディアファクトリー刊・ペンネームは島津さやか)などがある。    

 



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