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イタリアにおけるスローフード現地レポート
 
15 Dicembre 2003
パートT 「食」「地方」を見つめ直すきっかけに

池田 律子







 今回から隔月4回の連載で、日本でもすっかりおなじみになった“スローフード”の発祥の地イタリアで今、このブームがもたらした現象を現地実況レポート風にお伝えしたいと思う。

まずこのブームが多くのイタリア人に、「食」「地方」を見つめ直すきっかけを与え、そしてこつこつとまっとうな食材を小規模生産してきた人たちにスポットライトが当たったことで、さまざまな理由から消滅しかけていた地方の伝統的な食材、たとえば、チーズ・ハム・パン・ドルチェ・地葡萄を使用したワインの存在が、「そんな美味しいものがあるんだったら食べたいよ!」という、イタリア中の食いしん坊の胃袋を呼び覚まし、あるいは、「おらたちの伝統を消してはならね〜」という行動に駆り立て、一気に花咲いた感のあるここ数年のイタリア・・・・

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写真説明
上:フリウリの山奥で絶品のサラミを作るスローフーダーおじいちゃん85歳
左:こんな美味しいご飯を食べてる牛達のチーズが美味しくないはずはない
右:全てが手作業でなされるアンチョビ作り

たとえば、1年の半分を深い雪に閉ざされるアルプスの麓の村々で、長い間生活の糧として家族で細々と手作りされてきていた山のチーズが、スローフードのPRの結果、その自然度100%の味わいと、餌の安全性から見直され、今では夏にわざわざ牛を放牧しているアルプスまでトレッキングをしてでかけ、山小屋で熟成中のチーズを予約をしてゆくチーズ愛好家や、都会のチーズ商の激増で山の人々の生活が劇的に豊かになってきた。その結果、365日間休みない重労働&低賃金を強いられる山から都会に出た息子や娘達が、故郷やその仕事に誇りを見出し帰郷し、村々に活気が戻ってきたという。そんな嬉しいnewsを取材で知り合ったお父さんやお母さんから聞くと、「あ〜よかった」と胸がジーンとしてしまう。

海では、日本人がジブラルタル沖で地中海に入る前のマグロを根こそぎ捕まえてしまうため漁獲高が激減し、消え行く直前だった伝統ある勇壮なシチリアのマグロ追い込み漁「ラ・マッタンツァ」がTVや雑誌の取材で一躍世界的に有名になり、観光客がそれを見るために僻地にも押し寄せるようになってきた。これは漁獲高増は望めないけど、消滅しかけていた伝統漁法が次世代に引き継がれる事を約束したし、シチリア各地に観光ブームを巻き起こしている。

そして何よりも私が「素敵だな!」と思うのは、取材でいつもお世話になるピエモンテ州ブラという田舎町にあるスローフード協会で働く世界から来たスタッフが皆とても生き生きとしていて、どんなに忙しくても&難題にもいつもフレンドリーに前向きに対応してくれること!それがきっとここまでこのムーヴメントを広げてきた原動力のような気がする。  


       


著者プロフィール
池田律子(いけだ りつこ)

兵庫県西宮市生まれ。 甲南大学卒業後日本航空に勤務。1992年に退社し、イタリア国立ペルージア大学に留学。94年よりミラノで料理教室を始める。取材・執筆活動のほか、日本の百貨店でのイタリア展ほか食にまつわるイベントプロデュースを手がける。98年より日本でも料理教室を開催。    

 


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