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大理石の里カッラーラに生きる  
15 Marzo 2019

第4回
あらゆる道はワインに? 



 
大木和子 



●廃墟の土地に葡萄畑を見つける
私がカッラーラの山の中腹に7000坪の土地付きの廃墟を購入し、茨で覆われた土地を整備していくと、何と葡萄畑が出てきました。ここは、もともと、カッラーラの貴族の持つ農業のための家だったのです。イタリアではちょっとしたお金持ちや貴族は、自分たち用のワインやオリーブオイルを作る為の農場を持っています。(勿論その農場を管理する人もやとっているのですが。) ですから、ここには沢山の果物の木と、葡萄畑がありました。

トップ写真:@丹精こめてつくったワイン、美しい大理石の山々と葡萄畑を背景に 

ものづくりを尊敬していた私は、ワインを作りたいとすぐに思いました。幸いにも、いろいろと助けてくれていたイタリア人の彫刻家の友達の実家も葡萄畑を持っていて、彼は葡萄畑の事やワイン作りの事に詳しかったので、私のワイン作りは実現しました。

●土に合う葡萄の品種に総入れ替え
しかし、一番最初の年に作ったワインはワインと呼べる物ではありませんでした。翌年から、手をかけてワインをつくりを続けていましたが、自分たちで消化する分だけの量と質でした。 

写真下:ABCD葡萄畑の品種総入れ替え工事

本格的なワイン作りをするには、既存の葡萄は古くて弱りすぎているという事がわかり、2010年に太陽を浴びやすい方向や、土のpHも検査して、土に合う葡萄の品種を調べ上げ、葡萄畑の総入れ替えをしました。

その時に選んだ葡萄は、赤ワイン用に、サンジョベーゼ、カヴェルネ・ソヴィニョン、メルロー,そして白ワイン用に、ヴェルメンティーノ、ヴィヨニエを選びました。

  写真下:EF葡萄畑、総入れ替え工事を終え、順調に育つ葡萄の木
  写真上:G青々と育つ葡萄畑

トスカーナの赤葡萄の土着品種であるサンジョベーゼだけにしなかったのは、海の側のサンジョベーゼはタンニンが強くなるという、欠点があります。ですから、トスカーナでもモンタルチーノなどの山の葡萄地帯ではサンジョベーゼ100%のワイン作りが盛んですが、ボルゲリなどの比較的海に近いトスカーナ地域では、メルロー、カヴェルネなどのボルドーワインに使われている葡萄を植えて作ったワイン、『スーパートスカン』といわれるサッシカイアなどが、有名な様に、サンジョベーゼ単体で使うリスクを懸念しました。

写真下:Hトスカーナの赤葡萄の土着品種サンジョベーゼ

そして白ワインはリグーリア州(カッラーラはリグーリアとトスカーナの州境)の葡萄、ヴェルメンティーノと、ヴェルメンティーノとの相性のいいローム地方の葡萄、ヴィヨニエを植えました。これは葡萄畑を監督してくれている彫刻家の友人オリヴィエロと、リグーリアのヴェルメンティーノの品質向上に大貢献した大醸造家バッチガルピが相談して決めました。

写真下:I白葡萄の土着品種ヴェルメンティーノ

●ソムリエ資格取得に挑戦
そして葡萄畑を作り始めた頃、私はイタリアの国家資格にも準ずるといわれているAIS(イタリアソムリエ協会)のソムリエ育成講座に通い始めました。3年間通った後、2タイプの試験があり、それに合格したらAIS認定のソムリエの資格を取得できるというコースはマリーナディカッラーラで月曜日の夜9時から始まり、遅い時は0時を回って終わる事もしばしばありました。全てイタリア語での授業は大変でしたが、好きな分野でしたから、聞きたい知りたい気持ちが勝り、退屈するどころか毎回、とても刺激的でした。

そして毎回、学術的な講座の後に,ワインのテイスティングの時間がありました。毎回3種類のワインをソムリエの講師の方々と一緒にテイスティングするのです。これが非常によかったです。それまでの私は、自分が美味しいと思うワインが美味しいんだ、って思っていました。でもワインのテイスティングの基準に合わせて、一緒に調べていったり、講師の意見を聞きながら、いいワインの条件を聞いて一緒に飲んでみたりして、どのワインが美味しくて、どのワインが最高なのか、わかってきたのです。

何でもそうだと思いますが、やはり美味しい物を頂いていないと、美味しい物を食べてもわかりませんよね。偽物の拳銃を売っている人に「偽物と本物の違いを知るには?」と質問した所、「本物を知る事」と答えたそうです。偽物ばかり見ていても、どれが本物でどれが偽物かはわからないそうです。ただ本物を知っていたら、これは偽物だと、分かるというお話。これは全てに通用するな,と思っています。

写真下:Jソムリエ講座の仲間と

●講座の仲間とともに楽しく学ぶ
またこのソムリエ講座で沢山の仲間と出会いました。ソムリエ試験の為に、授業以外でも勉強会をしようという事に成り、水曜日の夜、バールで集まって、皆でワインのテイスティングやテスト勉強をしました。これはとても細かく教えてくれて、自分の足りない事などもすごくわかり、為になりました。

イタリアに来て初めて自分の為の時間と言うか、、、ワインの勉強をするのが楽しくて仕方がなかったです。テスト3ヶ月前くらいから、毎日の様に勉強していました。こんなにも人生で勉強した事あったかしら?と思った位です。

そしてテスト当日。自分の頑張ってきた事を発揮できました。たくさんのイタリア人よりもいい点数をとって一次試験は通過しました。そして2週間後に行われた口答試験とテイスティングの試験も無事に通過してはれてソムリエになりました。そのときに一緒に勉強した仲間とは今も友達です。

●葡萄づくりへの取り組みも変わる
ソムリエになった事で、葡萄畑に対しての取り組み方も変わりました。自分が葡萄を育ててワインを作るのだという自我が強くなりました。そして、他人まかせにしないで葡萄のお世話、主に、葉剪定の仕事を始めました。

「私が今年は葡萄のお世話をしたから、今年のワインは美味しいわよ」なんて、傲慢な気持ちでいると、雨が降ってボトリティスという菌に侵されてしまいました。一粒一粒小さいはさみで、カビに侵された実を取り除いたりもしましたが、また雨が降り、の繰り返しで、どうする事も出来ませんでした。

自然の前に何の手だても出来ない、自分の無力さを思い知らされました。その経験から、自分が葡萄を美味しくした。と思う事は出来なくなりました。葡萄を美味しくしてくれるのはあくまでも太陽などの天候と土のおかげなのです。

 写真下左:K葡萄の葉剪定          写真下右:Lベンデミア (葡萄の収穫)    

私達はその力を最大限に葡萄にいく様にお手伝いするだけであると。そして自然に味方になってもらえる様に正直に生きることだと、心から感じました。

そんな事を経験しながら、葡萄畑の仕事をしていると、仕事は祈りだと気付きました。おいしい葡萄が出来る様に、そして美味しいワインが出来る様に。そしてそのワインを飲んだ方が、元気になったり,幸せになれる様に、、、。

●丹誠込めて作ったワインを日本で販売
丹誠込めて作ったワインを日本に販売したいと思いました。理由は私のふるさと日本に自分のワインを販売する事で、日本とイタリアの架け橋になりたいという夢を実現させたかったのです。

2015年の葡萄で作ったワインを、2018年1月日本に輸入しました。ワインを販売する為に2017年に大阪の実家に株式会社を設立し、酒販免許も取得しました。輸入業務も一人でこなし、ワインを輸入し、お披露目する為に、神戸、東京、京都のイタリアレストランでワイン会を行いました。総勢150名の方が参加してくださり、ワインを日本に送り出しました。

写真下:MN日本のレストランでワインのお披露目  

今の私は、春から秋にかけてはイタリアで、葡萄の栽培と養蜂、そしてB&Bの女将さんをして、冬は日本でワインの営業・販売をするというライフスタイルが、確立しつつあります。

こんな人生が待っていたなんて、主人が亡くなった18年前は思いもしませんでした。そう思うと20年後はどんな風に過ごしているのか、思ってもみない暮らしをしているかもしれません。「人生は未知との遭遇」だと、昔、尊敬する方から教えて頂きました。未知との遭遇を楽しみながら,乗り越えていきたいと思います。

写真下:Oカッラーラの美しい大理石の山々を背景とした葡萄畑  



案内人プロフィール
大木和子(Oki Kazuko)

1998年 彫刻家大木達美と結婚。3年の結婚生活で夫が他界。その後、亡き夫が彫刻家として活躍していた大理石の産地、イタリア・カッラーラに渡り、7000坪の土地付きの廃墟を購入・4年かけて家を建設し、「B&B、Galleria Ars Apua」を経営し、7年かけて葡萄畑を完成させる。 2011年カッラーラ市より「Premio Eccelente」(市長賞)を受賞。2014年AIS認定ソムリエ資格取得。「B&Bアルスアプア」経営。葡萄の栽培、ワインの醸造家。
http://cantinaoki.com  
http://www.g-arsapua.com/ 



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