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新・ヴァイオリンの町クレモナから
15 Marzo 2019

前編 クレモナとヴァイオリン



  安田恵美子


1.世界に知られるヴァイオリンの町
イタリア最長の川ポー川沿いに生まれたクレモナは、北イタリアの西側にあるミラノと東側にあるヴェネツィア、そしてミラノの南西にあるジェノヴァを直線で結ぶと出来る三角形の丁度真ん中辺りに位置する町です。

現在世界中にヴァイオリンの町としてその名を知られるこの町は、16世紀半ばから18世紀半ばに至るまで、スペイン系ハプスブルク家やオーストリア・ハプスブルク家といった外国人の支配下でも揺るぐ事なく、ヨーロッパ屈指のヴァイオリン製作の町として栄えました。
 

写真トップ@町中にたくさん開かれているヴァイオリン工房のひとつ
写真上Aクレモナ駅前広場の巨大なヴァイオリン


ミラノからは、マントヴァ行きの直行列車で約1時間ほどで到着できます。クレモナ駅を降り駅前広場を通り抜けて右手に進みますと、ほどなくリソルジメント広場 Piazza Risorgimentoに出ます。そこから左手に向かってまっすぐに伸びている道が、古くから町の「メイン・ストリート」として栄えたコルソ・ガリヴァルディCorso Garibaldiで、この通り沿いに世界でもっとも名前の知られているヴァイオリン製作家であるアントニオ・ストラディヴァリの縁のある教会、元住居を見る事が出来ます。    

写真上BC町のあちこちで見られるヴァイオリンの姿


2.ストラディヴァリ、アマティ、グァルネリの活躍
ヴァイオリンがこの世に誕生したのは16世紀前半頃と言われています。クレモナを始め、すぐそばのブレーシャやマントヴァ、そしてヴェローナ、フェッラーラ、ヴェネツィアと言った北イタリアの町々で弦楽器職人達が持ち運びの便利で音の良く鳴る楽器を作ろうと試行錯誤を重ねた結果、今のヴァイオリンが生まれました。

クレモナでも1539年に工房を開いたアンドレア・アマティのおかげでクレモナ産の楽器が一流として認められるようになり、アンドレアの孫ニコロ・アマティや、彼の家に住み込みで修行を積んだアンドレア・グァルネリとグァルネリ・デル・ジェスを始めとする彼の子孫、そしてニコロの楽器に手を入れるほど一番弟子として力をつけたアントニオ・ストラディヴァリにより、ヨーロッパ中の宮廷や貴族、音楽家たちからクレモナに楽器の注文が集中するようになりました。

3.ストラディヴァリを偲ぶ街歩き
●ストラディヴァリが結婚式を挙げた教会

コルソ・ガリヴァルディを町の中心に向かって歩いていきますと、左手に白い柱が堂々としたネオ・クラシック様式の「サンタガタ教会 Chiesa di Sant'Agata」が見えてきます。この教会で、1667年7月4日に若きストラディヴァリが8歳年上の未亡人フランチェスカ・フェッラボスキと結婚式を挙げました。当時ストラディヴァリは師匠ニコロ・アマティの下に通いながら楽器作りに精を出していましたが、まだまだ駆け出しで思うような木材を手に入れる事も出来ず苦労を重ねていました。    

    写真上Dネオ・クラシック様式のサンタガタ教会


●ストラディヴァリ新婚時のアパート
教会から数メートル先に進んだ左手に、ベンチに座ったストラディヴァリ像を見る事が出来ますが、その背後の2階が1680年までストラディヴァリとフランチェスカが新婚生活を送ったとされるアパートです。

   写真上左Eストラディヴァリ新婚の家   写真上右Fストラディヴァリ新婚の家の前に置かれたストラディヴァリの銅像  


このアパート、現在は1階に入っている食器屋さん (Te per Due) の持ち物で、お店が開いている時間であれば、中に入ることが出来ます(無料)。 奥の狭い階段に通じる扉を開けてもらい、上に上がると、ちいちゃな中庭に出ます。家の窓からコルソ・ガリヴァルディも眺められます。修行半ばの若き職人の家にふさわしく、大変こじんまりとしたアパートです。

     写真上GHストラディヴァリ新婚の家の中では、度々特別展や室内楽演奏会も催されている  


●かってのストラディヴァリの工房や一家のお墓の場所も
このコルソ・ガリヴァルディを更に歩いて行きますと、やがてショッピング・ストリートであるコルソ・カンピ Corso Campiに出ます。それを真っ直ぐ進んで左手に見えてくるのが、「ガッレーリア XXVアプリーレGalleria XXV Aprile」と言う威風堂々としたアーケードの建物です。この建物は、イタリアがファシズム政権であった1930年代に、かつて町の職人たちの工房が密集して建てられていた「職人工房地区」を壊して建築されました。

  写真上IJファシズム建築の「ガッレーリア XXVアプリーレ」  


1680年に仕事が軌道に乗り出したストラディヴァリは、手狭になったコルソ・ガリヴァルディの家を出てより広い工房兼住居を求めて、この地区に引っ越しました。すぐ近くにアマティ一家、グァルネリ一家の工房も建っておりましたが、古くなったと言う理由で一掃されてしまい、今ではファシズム建築である現在のガッレーリアが見られるのみです。

写真上左K人々が憩うローマ公園   
写真上右Lかつてストラディヴァリ一家のお墓のあった場所に、墓石のレプリカが置かれている(オリジナルはヴァイオリン博物館内に展示)  


このアーケードの中央通路を通り抜けますと、ローマ公園 Piazza Romaに出ます。芝生と噴水のあるこの公園、あたたかい季節にはクレモナっ子が日向ぼっこに訪れ、公園内を子供向けの汽車も走り抜ける今では市民の憩いの場ですが、ここには1869年まで、大聖堂についで二番目に規模の大きい教会、サン・ドメニコ教会が建っていました。

この教会は、ストラディヴァリ達の工房に面する位置に正面が向いており、中の礼拝堂にはストラディヴァリ一家のお墓も入っていました。しかし、ドミニコ会の衰退と共に次第に教会としての役割を果たせなくなり、18世紀にはフランス軍の兵舎として用いられたため劣化も激しくなり、1869年に完全に取り壊されてしまいました。当時の面影は今はなく、ローマ公園の端に鎖に囲まれて鎮座するストラディヴァリ一家の墓石のレプリカだけが、歴史を物語っているのみです。

写真上M現在「ジェラテリア XXVアプリーレ」がある辺りに、かつてはストラディヴァリ工房が建てられていたとされる  


因みに、ストラディヴァリの工房ですが、現在ローマ公園に面した側のガッレーリア内に入っているジェラート屋「ジェラテリア XXVアプリーレ」辺りに、建っていたとされています。 さて、再びガッレーリアを通り抜けて元のコルソ・カンピに戻り、そこからまっずぐにマルコーニ広場 Piazza Marconiまで歩いていきますと、いよいよヴァイオリンの町・クレモナの全貌が一望できる「ヴァイオリン博物館 Museo del Violino」 前に出ます。

写真上Nマルコーニ広場からヴァイオリン博物館を臨む  


4.「ヴァイオリン博物館」 2013年9月にオープン
●ヴァイオリンの誕生と歴史を紹介

1940年代に建てられたモダニズム建築のパラッツォ・デッラルテ内にオープンしたこの「ヴァイオリン博物館 Museo del Violino」では、クレモナ・ヴァイオリンの全てに触れる事が出来ます。まず第1室から第4室まではヴァイオリンの誕生と歴史、そしてどのような材料を使ってどのように作られているかを、マルチ・メディアを使って知る事が出来ます。

 写真上Oヴァイオリン博物館内、マルチ・メディアでヴァイオリンの世界を紹介  


ヴァイオリン工房の中を覗く様な気分で、音と映像でヴァイオリンが出来上がる過程をご覧ください。第4室で世界に名高いストラディヴァリ、アマティ、グァルネリ一家について詳しく書かれたヴァーチャル・ブックのページをめくった後には、いよいよ彼らの楽器たちとの出会いです。

●世界中のクレモナ弦楽器コレクションを一同に
第5室では、クレモナ市が海外に散らばっていったクレモナ楽器を徐々に収集した結実であるクレモナ市弦楽器コレクションを堪能出来ます。これらの楽器はしばしば1階の室内楽ホールAuditoriumで行われるコンサートに持ち出され、音色も聴く事が出来ます。何百年経っても未だに現役として演奏可能でいられるのは、他の古楽器にはあり得ないヴァイオリンだけが持つ特性なのです。

写真上Pヴァイオリン博物館内、クレモナ市弦楽器コレクションの展示  


第6室では、世界のどこでも見ることの出来ないオリジナル資料であるストラディヴァリの型、内型、図面、道具が展示されています。これらの遺品を眺めていると、彼の楽器作りへの熱意が伝わって来るようです。第7室、第9室では度々特別展が開催されます。特に第9室は、世界中に「お嫁入り」していったストラディヴァリ、アマティ、グァルネリの楽器が、一時的にクレモナに里帰りするコーナーです。次回この博物館を訪れますと、また別のクレモナ生まれの銘器と出会えるかもしれません。

●展示楽器のミニ・コンサートも
1階の「室内楽ホール Auditorium」は、世界最高水準音質のホールです。ここでは毎週お昼の時間にミニ・コンサートAudizioneが開かれ、ストラディヴァリを始めとする展示楽器の音色を気軽に楽しむ事が出来ます。春、秋には企画コンサート・シリーズも開かれ、世界中の名演奏家たちが奏でる銘器の音色を堪能する事が出来ます。

  写真上Qヴァイオリン博物館内・室内楽コンサートホール  


5.今も100人以上のバイオリン職人が楽器づくり
ヴァイオリン博物館でクレモナ・ヴァイオリンの世界を満喫したら、もう一度町を散策してみてください。町のあちこちでショーウインドウ越しに楽器作りに精を出す現代の職人さん達の姿を見る事が出来るかもしれません。

 写真上R工房で働くヴァイオリン職人の姿  


この小さな町の中で、実に100人以上のヴァイオリン職人が明日のストラディヴァリを目指して楽器作りにいそしんでいるのです。

写真上S?町中にたくさんの工房が開かれている  


世界でただひとつの町クレモナ。本当に不思議な魅力を持った町です。



ヴァイオリンの町クレモナから   著者プロフィール
安田恵美子 Yasuda Emiko

住めば住むほど、知れば知るほど、クレモナの魅力に惹かれてしまいます。気がついたら在20年を超えました。現在ヴァイオリン博物館のスタッフの一員として、日本のお客様を中心に来館される方々のお手伝いをさせていただいています。楽しく・わかりやすく、がモットーです。少しでも多くの方にこの町を訪れて、クレモナを大好きになっていただければ、と願っています。

データ
Dati

■交通アクセス
<クレモナへのアクセス>
ミラノからマントヴァ行き列車で約1時間 (ほぼ1時間に1本)
https://www.trenitalia.com/

■各種情報
ストラディヴァリ新婚の家 Te per Due Casa nuziale di Stradivari
Corso Garibaldi 57, 26100 Cremona
tel/fax: (+39) 0372 30500, e-mail: info@teperdue.it
https://www.teperdue.it
開館日: 火曜日から土曜日まで
開館時間: 10:00-12:30, 16.00-19:30

ヴァイオリン博物館 Museo del Violino
Piazza Marconi 5, 26100 Cremona
インフォ: tel: (+39) 0372 801801, fax: (+39) 0372 801888, e-mail: info@museodelviolino.org
チケットオフィス: tel: (+39) 0372 080809
日本語館内ガイド(注)、Audizione予約:marketing@museodelviolino.org www.museodelviolino.org/
開館日: 火曜日から日曜日まで(1月1日、12月25日を除く)
開館時間: 10:00-18:00
入館料: 10ユーロ、学生・65歳以上7ユーロ(6歳まで無料)
(注)館内ガイドの料金については、ヴァイオリン博物館サイトでご確認ください。

クレモナ観光案内所  Cremona Infopoint
Piazza del Comune 5, 26100 Cremona
tel: (+39) 0372 407081
info.turismo@comune.cremona.it, info@targetturismo.com
https://www.turismocremona.it/en
開館日: 月曜日から日曜日まで
開館時間: 10:00-16:30 (1-2月、8月、12月), 10:00-18:00 (3-7月、9-11月)
予約なしでも、当日にヴァイオリン工房見学 (1時間)を手配してもらえます(有料)。



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