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オルガニスト吉田愛のドロミテ暮らし
15 Marzo 2018

第5回 

ウィンタースポーツ

  
文・写真/吉田愛 
●今年は冬山を満喫する最高の年に
今この記事を書いている2月末、イタリアでは「シベリア寒波」がやってくると大騒ぎ。3月になろうかというこの時期にこの寒さは確かに稀なことです。私が暮らす標高1000メートルの谷では皆、寒さには慣れていますが、最低気温が「−18度」との予想にはさすがに驚くばかり。生活地域でここまで気温が下がることはやはり珍しいです。なかなか訪れない春の気配に少しウンザリするところですが、実はこれが嬉しい人たちもいるのです!

ウィンタースポーツ好きには、今年は冬山を満喫できる最高の年だったんだとか。確かに去年は暖冬で雪もほとんど降らず、緑の山に人口雪のゲレンデだけが白く光っているいう、なんとも不自然な景色でしたが、今年は12月の早い時期から度々雪が降り、ホワイトクリスマス、元旦の初雪と、スポーツをしなくても雪景色の冬山生活を味わうことができました。

トップ写真:@ラヴァツェ渓谷のカントリースキーコース。雪のドロミテ山塊を望みながら。写真下左:A雪のドロミテ山塊に囲まれた冬のフィエンメ渓谷の景色。   写真下右:Bフィエンメ渓谷と南チロル州の境にあるラヴァツェ渓谷のカントリースキーコース。ドロミテの名峰が一望に見渡せる絶景のコース。

●子供のころから「ウインタースポーツ」に自然と慣れ親しむ
こういう土地柄、谷の人たちは小さい頃からウインタースポーツに自然と慣れ親しんでいます。日本でも東北や山岳地帯ではそうなのでしょうが、東京生まれ育ちでスポーツに疎い私には、ここに暮らし始めたころには新鮮な光景でした。今でこそ見ることはありませんが、その昔はスキーやソリで学校に通っていた子供もいるそうです。

写真下:Cテゼロ村にあるクロスカントリースキーのゲレンデ。ここで毎週末のように大会も開かれている。

さて、イタリアの小中学校には日本のように放課後の部活動というものが基本的にはありません。午前中の学校の後は家に戻って昼食を食べ、宿題を済ませたら、個人的にそれぞれの習い事に通います。この谷の子供たちが冬の間に通う習い事の多くがそのようなウインタースポーツです。

女の子に人気なのはフィギアスケート、男の子はホッケー、男女ともにクロスカントリー、アルペンスキー、スノーボード、バイアスロン、スキージャンプなど、つまりまさに冬季オリンピック種目になっているものですが、子供が習えるそのようなチームが谷に複数団体存在します。そして週末には村対抗、あちら谷こちら谷対抗の大会が催され、出場する子供も応援する親も大忙しです。私が音楽を教えている子供の親の中には、昔スキーのプロ選手だったとか、はたまた、その世界大会で北海道や長野に行ったことがあるとかいう人もいるくらいです。谷の人には日本がウインタースポーツに強いことは知られていて、私が知らないような日本選手の名前が飛び交うこともあります。     

●ここフィエンメ渓谷でもノルディックスキー世界選手権
ここフィエンメ渓谷ではウィンタースポーツの大会が毎週末のように催されていますが、例えば2013年にはこの谷で2回目になるノルディックスキー世界選手権が催されました。この谷の町プレダッツォPredazzoにはあの高梨沙羅選手が日本人初の銀、また混合団体戦で金メダルを獲得したスキージャンプ台があるんです。もちろんその時は私も日本国旗を持って応援に行きましたよ!このスキージャンプ競技施設の入り口にはここで賞を取った歴代の選手がパネルに記されています。日本人選手の名前もしっかり刻まれていますが、海外で見る日本人の名前は格別に誇らしいです。

 写真下左:Dプレダッツォのスキージャンプ競技施設。   写真下右:E施設の入り口に掲げられたプレート。日本選手の名前が連なる。

●クロスカントリー「マルチャロンガ」には世界各地から7000人参加
またこの谷は、1月の最終日曜日にはマルチャロンガMarcialongaというクロスカントリースキーの大会が開かれることでも有名です。今年で45年目となるこの伝統的な大会は、谷を横断する川沿いの70キロまたは45キロのコースを滑るもので、毎年7000人前後の人が世界各地から参加します。

写真下左:Fマルチャロンガ大会でのひとコマ。終盤は厳しい坂道を登って町に凱旋してくる。  写真下中:G街中を通り抜ける選手たち。 写真下右:Hゴール付近の選手と応援団。 

オリンピックでも著名な北欧の選手団も混じりその追っかけ応援団もやってきます。またアマチュアでも申し込みさえすれば誰でも参加でき、一日かけてゴールを目指します。友達にも毎年これを目指して体力作りをしている人もいるので、私にも身近に感じられる大会のひとつです。

写真下左:Iゴール前に構える観客たち。  写真下右:J70キロを滑りぬけたゴール地点。。

●私もカントリースキーでゲレンデに
そんな土地に住み続けること十数年。郷に入れば郷に従えで、せっかくのこの冬山を楽しむべく、私も毎年数回ではありますがカントリースキーをするようになりました。車で数分でゲレンデ。数時間〜半日、途中の山小屋でお昼ごはんを食べながらのんびり滑り、終わったら自宅に戻って湯船に浸かるという、その日の気分で気楽にできるのが山の田舎に住む利点です。

写真下:K雪道を行くとひっそりとたたずむ山小屋レストランに到着。

滑ること以上に、近くに聳えるドロミテ山塊の雪景色を見、木の枝から時々落下する雪の音が聞こえる静かなモミの森に身を置き、ぴんと張った冷たい空気を深呼吸することが何よりのリフレッシュです。「イースターを過ぎるまでは本当の春が来ない」とヨーロッパでは言われますから、それまでにもう一回くらいゲレンデに出られればいいなと思いながら、最後の雪景色を仰いでいます。

●山小屋での郷土料理やシュトゥルーデルも楽しみ
ウインタースポーツの観光客でも賑わうフィエンメ渓谷には、他のドロミテの谷と同様、スキーやウェアのレンタルも気軽にできますし、ホテルからスキー場への送迎やスキーバスも走り、充実したサービスが提供されています。またスキーが苦手でも、例えばスノーシュー(イタリア語でチャスポレCiaspole)をレンタルして雪山を思いのままに散歩するのも楽しいのでお勧めです。

写真下左:L郷土料理のひとつ、スペックなどのハムの盛り合わせ。 写真下右:Mポレンタに溶けたチーズをかけ、きのことサルシッチャ(ソーゼージ)を載せた、この地方の伝統的な一皿。

車では入っていけない秘境的な場所に点在する山小屋にたどり着いたら、郷土料理の温かいグラシュスープや、チーズをかけたポレンタ、ウインナーを食べて体を温めてくださいね。そしてシュトゥルーデルという林檎パイを最後に食べることもお忘れなく。帰り道が待っていることも計算して、どうぞ食べ過ぎないように!


著者紹介
吉田 愛  Yoshida Ai
東京都出身。武蔵野音楽大学、ドイツ・リューベック音楽大学にて、パイプオルガン、チェンバロ、教会音楽を学ぶ。7年間のドイツ生活を経て帰国し、盛岡市民文化ホール専属オルガニストとしてオルガンの普及活動に勤めた。2006年、パイプオルガン制作に携わるイタリア人夫との結婚を機にトレンティーノ州ドロミテ山塊の麓フィエンメ渓谷に移り住み、北イタリアを拠点にヨーロッパ、日本で演奏活動を行う他、毎夏日本人のためのドロミテ・オルガンアカデミーを開催している。CD「バッハとイタリア」「4手の対話」(大阪、ワオンレコード)は各音楽誌で特選盤。南チロル州エーニャ市サン・ニコロ教会オルガニスト。
ブログ http://organvita.exblog.jp
ホームページ http://www.aialexorgano4mani.com





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