JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
オルガニスト吉田愛のドロミテ暮らし
5 Novembre 2017

第4回 

フィエンメ渓谷、秋の魅力 

  
文・写真/吉田愛 
●普段の落ち着きを取り戻す秋の表情
今年のイタリアの夏は猛暑でしたが、ドロミテでも30度を超える日が続き、村人も「ここ何十年もこんな夏は経験したことがない!」と口を揃えていうくらい良い夏でした。避暑地でもあるドロミテには涼を求める観光客が例年を上回って訪れたようです。

そして秋。9月に標高1500Mまで雪が降った日があり心配したものの、これまたこんなに心地よい快晴が続く秋は久しぶりで、色づいた山の木々をずいぶんと長い間楽しむことができています。夏が過ぎて観光客も少なくなり学校も始まると、谷は普段の顔を取り戻します。私はそんな落ち着きを取り戻した谷が好きです。今回はそんなドロミテの様子をお伝えしようと思います。

トップ写真:@カヴァレーゼ村と山を下りた羊たち
写真下左:A秋めいてきたフィエンメ渓谷。   写真下右:Bアディジェ渓谷に広がる林檎と葡萄畑も黄金色に輝く

●高地に放牧されていた牛や羊が再び村へ
秋のドロミテには夏とは違う見所があります。まず、夏の間に標高約2000M級の高地に放牧される牛や羊などの動物が、山から吹き降りる涼しい風と共に村に戻ってきます。そのため谷ではこの時期、道路を横断する羊の群れで小さな渋滞が起こることがあります。車に体を擦り付けるように通り過ぎていくこともあって、羊フェチの私にとっては嬉しい渋滞! 羊たちは日中は草を食みながら少しずつ移動しますが、夜は簡易網の中で番犬に見張られながら過ごします。

写真下左:Cドロミテの名峰をバックにまどろむ羊たち。   写真下右:D草を食む羊の群れと秋の谷。

一方、牛はやがて訪れる長い冬を牛舎で過ごすようになるまでの間、谷の牧草地でのんびりと最後の太陽を楽しみます。そんな訳で今の季節、谷の至るところで動物たちの長閑な姿を見ることができます。ちなみに今夏、高地に狼が現れて羊の群れに被害が出たことがニュースとなりました。また南チロル州では熊が谷近くまで降りてきて危険を脅かし、その熊をどうするかで連日論議を呼んでいます。

 写真下:E羊の大群が道路を横断。大渋滞。  

●村ではヤギや牛の下山を祝うお祭り
さて、アルプス各地でも催されているのですが、ここフィエンメ渓谷でもこの時期、そんな動物たちの下山をイベントにしたお祭りがあります。まず毎年9月第二日曜日にカヴァレーゼCavaleseで「ヤギの下山祭Desmontegada de le Caore」が、また10月第二日曜日にプレダッツオPredazzoで「牛の下山祭Desmontegada de le Vache」が催されます。どちらもこの日に、頭飾りをつけてお洒落をしたヤギや牛、ロバたちが羊飼い牛飼いに誘導されながら町を凱旋行進します。

写真下左:F羊飼いに先導されて凱旋行進するヤギの群れ。   写真下右:G凱旋が終わって広場に集められた羊とヤギはご褒美の草を食む。 

そしてそれを盛り上げるように村の音楽隊がパレードしたり、地元の工芸品やローカルフードの露店が並んだり、地元チーズの品評会があったり、とても賑やかな週末。また「ミス牛ヤギ」ならぬ動物の能力コンテストが行われ、賞を獲得したヤギや牛には豪華なカウベルが贈られます。これはその動物を所有する酪農農家の勲章となります。山小屋のレストランなどに行くとよく、そのようなカウベルが飾られているのを見ることができます。

写真下左:H立派に着飾られた牛たち。   写真下右:Iかわいい麦わら帽子をかぶった牛。
写真上左:J山小屋レストランに吊るされていた勲章カウベル。   写真上右:K民族衣装をきた女の子たちが、二輪車で鶏小屋を行進。

●林檎や葡萄の栽培農家は大忙し
ついでに書き加えておくと、ここフィエンメ渓谷は酪農が中心なのですが、トレンティーノ・アルトアディジェ州の林檎や葡萄を栽培している地域はこの時期、収穫で大忙しです。今年は暑い夏だったため高品質な果物が育ったそうですが、その一方、度重なる雹の被害で収穫量はかなり落ちてしまったようです。アディジェ川に沿った農園の道では今、収穫した果物を入れた大きなコンテナを積み上げたトラックと度々行き交います。

写真下左:L葡萄の段々畑。   写真下右:M林檎畑の前で直売。

●「ミス林檎コンテスト」で盛り上がる村も
また、10月には各教会でその年の収穫を感謝する特別ミサが行われますが、私が弾いている南チロル州の教会の周りは林檎農家が多いので、この日は祭壇も色とりどりの品種の林檎で可愛く飾られます。そしてミサの後は林檎を積み上げて作られたお神輿を担ぎながら町をぐるっと行列します。他には、「ミス林檎コンテスト」で盛り上がる村もあるんですよ。

写真下左:N林檎の神輿と共に、町を行列する教会の人々。聖歌隊や吹奏楽隊、シュッツェンと呼ばれる自警隊が連なります。  写真下右:O林檎で作られた御車と、ミス林檎の写真が広場に飾られていた南チロル州の村。

●村人のために祝う郷土色溢れたイベント
夏の観光客相手のイベントではない、村が村人のために祝う郷土色溢れたイベントが毎週末どこかで催されている、そんなドロミテの秋。夏のハイキング、冬のスキーだけでなく、秋のドロミテも味わいに、ぜひ皆さん訪れてくださいね。

写真下左:Pかぼちゃやホウズキなどを売る秋の屋台。 写真下右:Qチーズの試食会場。生産先とチーズの特徴が貼り出されています。




著者紹介
吉田 愛  Yoshida Ai
東京都出身。武蔵野音楽大学、ドイツ・リューベック音楽大学にて、パイプオルガン、チェンバロ、教会音楽を学ぶ。7年間のドイツ生活を経て帰国し、盛岡市民文化ホール専属オルガニストとしてオルガンの普及活動に勤めた。2006年、パイプオルガン制作に携わるイタリア人夫との結婚を機にトレンティーノ州ドロミテ山塊の麓フィエンメ渓谷に移り住み、北イタリアを拠点にヨーロッパ、日本で演奏活動を行う他、毎夏日本人のためのドロミテ・オルガンアカデミーを開催している。CD「バッハとイタリア」「4手の対話」(大阪、ワオンレコード)は各音楽誌で特選盤。南チロル州エーニャ市サン・ニコロ教会オルガニスト。
ブログ http://organvita.exblog.jp
ホームページ http://www.aialexorgano4mani.com





オルガニスト吉田愛のドロミテ暮らし
もっとイタリアを知る  アルキーヴィオへ このページのTOPへ HOME PAGEへ


http://www.japanitalytravel.com
©  JAPAN PLUS ITALY - MILANO 2013 All rights reserved.