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ローマとその周辺の庭園めぐり
15 Novembre 2020

第18回
特別篇
フィレンツェのバルディーニ庭園


文・写真/阿部美寿穂
五年半に渡り連載させていただいたイタリアのお庭のご紹介も、今回が最終回となりました。

2020年は、イタリアにとっても、世界にとっても、今後忘れることのできない大きな転換期を迎えることになりました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、今までの価値観や、生活様式が根底から覆され、あって当然と思っていたものは跡形もなくなりました。私達は、今まで通りのやり方を捨て、新しい世界に適応して行かざるを得ない時代の波に翻弄されています。

感染症は、今後も消えることはなく、インフルエンザのように季節的に戻って来るだろうといわれています。まだ誰も先のことは分からない状況ですが、古いものは手放し、気持ちを新しく切り替えてスタートすることが、今後もやって来るだろうドラマティックな時代の波に、その都度、うまく対応して行けるのかもしれないと筆者は考えています。

イタリアで、新型コロナウイルス感染症が拡大してから9ヶ月になります。
ローマや近郊のお庭や公園、ヴィッラは、この期間、公園内での人々の集会(密集)に由来する感染を避ける為、閉鎖されていたか、多くの場合は、細い散策路にはロープが張られて、開けたスペースのみ訪れることのできる状態でした。その為、閉められてしまった園路は、この期間で草が生い茂ったり、道が崩れるなどして荒廃してしまったところも多くあります。

トップ写真:@バルディーニ庭園のコーヒーハウスの横のベルヴェデーレの洞窟。
写真下:Aフィレンツェのドゥオーモ広場。バルディーニ庭園は、ここから歩いて20〜25分ほど。

●今回はフィレンツェの庭園をご紹介
今回ご紹介するのは、ローマと同じイタリア中部の街フィレンツェにある、安心して訪れることのできるお庭です。ローマのあるラツィオ州と、フィレンツェのあるトスカーナ州はお隣同士の州ですので、ローマからフィレンツェへは列車で1時間少しで訪れることができます。ローマから日帰りも可能です。

今後、もしコロナウイルスの拡大が一時的に収まった際に、美しいイタリアを訪れる予定のツーリストの皆さまには、筆者はこちらのお庭をおすすめ致します。それでは、見どころと、おすすめの理由を交えながらご紹介を始めましょう!

●フィレンツェの街並みを見下ろす高台のお庭
フィレンツェのドゥオーモ広場から徒歩で約20分、ヴェッキオ橋からすぐ近くのところにあるバルディーニ庭園は、フィレンツェの素晴らしいパノラマを眼下に楽しむことのできる丘の上にあるお庭です。 丘の傾斜地を利用して造られた13世紀の庭園は、東京ドーム約1個分の大きさがあり、少しマニアックで、いつもとは違う美しいお庭を訪れたい人にぴったりです。

バルディーニ庭園を歩くと、足元の植物やお花のコレクションを見ながら、まるで手の届くところにあるかのようなフィレンツェの街の風景が眼下に迫って来ます。お花もフィレンツェの絶景も楽しみたい人にとっては、とても魅力的な空間です。

写真下左:B園内に入りすぐ左側にあるのが一つ目のおすすめフォトスポット。 写真下右Cよく手入れのされた散策路は安心して歩ける。

現在は、バルディーニとペイロン記念公園財団によって管理されていることから、入場料を払った人だけが入ることができます。その為、訪問者にとっては安全でエスクルーシブな緑のオアシスとなっています。

小さく、静かで、よく手入れが行き届いており、常に園内を巡回するスタッフのおかげで、安心して訪れることができます。また、公園内には、軽食などを召し上がることのできるコーヒーハウスや、散策前にお飲み物などを購入することのできる自動販売機がブックショップにあります。トイレには、ベビーベッド付きの個室タイプのものも完備しています。ブックショップのスタッフは英語が話せますので、フィレンツェの旅行情報や、滞在中に不安なことがあれば何でもご相談下さい。

●13世紀から現在に至る庭園の変遷
バルディーニ庭園の歴史は、中世にまで遡ります。
フィレンツェの非常に裕福なモッツィ家は、既に13世紀に、現在の庭園が広がるモンテクッコリの丘を含む多数の土地を所有していました。

14世紀の初頭になると、モッツィ家の経済的な崩壊に伴い、一度、所有物はフィレンツェ市によって購入され、再び16世紀後半にモッツィ家に返還されました。当時のモンテクッコリの丘の上のモッツィ家の建造物は、ロッジアのあるパラッツォ(本館)とその裏側にある庭園で構成されていました。

写真下左:Dバルディーニ庭園の入口(コスタ・サン・ジョルジョ通り2番地の入口)。   
写真下右:Eブックショップで入場券を購入したら、まずは歩き出す前に地図で確認しよう!

17世紀には、現在のバルディーニ庭園が占める場所は、2人の所有者に分断されました。お庭の東側はモッツィ家、西側は、ジョヴァン・フランチェスコ・マナドリです。この場所に、後に、建築家ゲラルド・シルヴァーニによってヴィラ・マナドラが建てられています。18世紀になると、この建物は、マナドリの相続人によってカンビアージ家に売却され、19世紀の初めに、今度はルイージ・ルブランと彼の息子ジャコモに譲渡されました。
こうして、所有者が替わる度に、新しい建物が建てられ、お庭には彫像や噴水などが置かれ、手が加えられて行きます。

20世紀に入ると、所有権は、庭園の名前となるステファノ・バルディーニに移されました。ステファノ・バルディーニは、購入後すぐに、庭園にある施設を彼の好みに合わせて改装し、屋外の壮大なショールームとして使用しました。

写真下:FG同庭園内の全席テラス席で食事が摂れるコーヒーハウス前に広がるフィレンツェの街並み。昼食時で、パスタを食べるサラリーマンが数名いた。  

●季節の花々が咲き誇るオリジナリティ溢れるお庭
バルディーニ庭園は、時代とスタイルが異なる3つのお庭から構成されています。
お庭の地図のお写真を見ていただくと、中央にある段々のようになっているスペースが、17世紀に造られたバロック様式の階段のお庭で、18世紀の終わりに、所有者一族のジュリオ・モッツィによって彫像や噴水を飾られました。一番の見どころです。5月には、こちらのお庭では、アイリスやバラが咲き誇ります。

写真下左:H筆者が訪れた時期は秋だが、まだバラの花を観賞することができた。  
写真下右:Iルリマツリの花。バルディーニ庭園は花と果樹のコレクションが多いことでも知られる。

そして、地図の向かって右側の森のように見える部分は、木立の中に水路の流れる、英国式庭園に、中国的な庭園要素が一部加わった興味深い様式です。木々の間にドラゴンの水路などが流れています。

庭園の左側にある開けた部分は、様々なお花と果物の木が植えられる農業スペースです。こちらでは、トスカーナ地方の農業の伝統的な様々な果樹が育てられています。お花は、3月にはツバキ、4月にはツツジとサツキが、5月にはバラが満開となり、6月以降はアジサイが咲き始めます。特に素晴らしいのは、4月に訪れると見ることのできる藤棚です。

写真下左:J4月に訪れると素晴らしい藤棚を楽しむことができる。
写真下右:Kアジサイなど、園内には至るところにお花が植栽されている。

丘の斜面を利用した庭園で、上の庭園と下の庭園とかなりの高低差があります。どのルートから歩き始めるかはお好みで大丈夫ですが、想像以上に丘は切り立っています。下の方から上に行く場合は、坂を上りながら、ちらちら後ろ側を振り返るようにしてみて下さい。フィレンツェの美しいパノラマが疲れた足を癒してくれます。

写真下:Lバロック様式の階段のお庭。かなりの急斜面。 

バルディーニ庭園を訪問した後に、更に緑の中を歩きたい場合は、“グリーンウェイ”を行くのもおすすめです。バルディーニ庭園を出た後、庭園の前にあるコスタ・サン・ジョルジョ通りを、ベルヴェデーレの要塞に向かって進みます。すると、緑道に沿ってボーボリ庭園が見えて来ます。ボーボリ庭園へは、バルディーニ庭園と同じチケットで入ることができます。

●美しいパノラマ写真撮影にも人気の庭園
フィレンツェ全体が見渡せるような、美しいパノラマ写真を撮影したい方に人気のあるお庭です。他の庭園に比べるとマイナーな存在ですが、園内の施設が管理されている為、安心して訪れることができます。また、他の観光スポットに比べると入場者も少なく、 三密を防ぎながら楽しめます。コロナウイルスの感染予防の観点から見ても、屋外での観光であるお庭の訪問はおすすめです。

写真下:M藤棚の下から見たフィレンツェ市街の絶景。


著者紹介
阿部美寿穂(あべみずほ)

ローマ県公認観光通訳。ローマ大学卒。地球の歩き方ローマ特派員、公益財団法人日伊協会コラムニスト、たびねすイタリアガイド。植物の専門知識を活かしてイタリアの庭園等も専門的に案内しています。グリーンアドバイザー。

バルディーニ庭園Giardino Bardini 関連データ
Dati
■住所
Costa San Giorgio, 2 Firenze, Italy

■オープン時間
10:00〜19:00

■休園日
月曜日

■入場料
8ユーロ

■「バルディーニ庭園」の情報
https://www.villabardini.it/en/(英語)
https://www.bardinipeyron.it(英語)

■行き方
フィレンツェのドゥオーモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)から徒歩約20分。幾つかの行き方があるが、ヴェッキオ橋を渡ったら、サンタ・フェリチタ教会を通り過ぎ、コスタ・ディ・サン・ジョルジョ通りをひたすら上る。300メートル程歩くと、左側にバルディーニ庭園の入口(コスタ・サン・ジョルジョ通り2番地)がある。なお、公園の入口は、コスタ・サン・ジョルジョ通り2番地(Costa San Giorgio, 2)とバルディ通り1番地(Via dei Bardi, 1)の2つがある。

注:2020年11月3日発布の首相令に基づき、バルディーニ庭園は2020年12月3日まで閉鎖されています。再開後の休園日および営業時間は、今後変更されることもありますので、ご訪問の際は、公式サイトなどで必ずご確認下さい。

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