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ローマとその周辺の庭園めぐり
15 Settembre 2019

第15回
ボマルツォの怪物公園


文・写真/阿部美寿穂
ローマから日帰りで行ける、楽しく、遊び心いっぱいの庭園といえば「ボマルツォの怪物公園 Parco dei Mostri di Bomarzo」!  この公園は、「ボマルツォの聖なる森 Sacro Bosco di Bomarzo」とも呼ばれています。

トップ写真:@怪物公園のアイドル『人食い鬼のオーガちゃん』。2013年には、日本のメーカーの飲料水のコマーシャルにも登場した。その唇には、「いかなる思考も飛び立つ」と彫られている。

ローマの子供達は、小さい頃に一度は、こちらの公園を学校の遠足で訪れたり、家族で遊びに来たことがあるかもしれません。最近では、森林浴ブームや、郊外の自然の中で楽しめるスポットの人気などにより、再びこの緑のオアシスに注目が集まっています。
迷路の様な庭園の中に、おおよそ四十の巨像が点在する聖なる森。その不思議な世界を探索しに、今日では世界中から旅行者が訪れています。それでは怪物達のラビリンスへ出発しましょう!

●「聖なる森の寓話」 それは貴族の新しい試み
緑豊かな中部イタリア。ローマから北におおよそ100キロメートル、ヴィテルボ県のボマルツォという人口1800人程の小さな町に、その広く名の知れた不思議な庭園はあります。

聖なる森の生誕の歴史は古く、遥か昔に遡ること五百年、ローマ貴族であるオルシーニ家のヴィチーノ・オルシーニは、父ジャン・コラードを亡くすと当主となり、ボマルツォの領地を引き継ぎます。1542年のことです。何故、ヴィチーノがこの様な奇想天外な庭園を造るに至ったのかは明確には分かっていませんが、愛する亡き妻、ジューリア・ファルネーゼへのメモリアル、またはこの世に住む目に見えぬ魔物などを表現したものなど、諸説あります。

写真下:AB緑豊かな「ボマルツォの怪物公園」内部

本格的に庭園のプロジェクトに携わったヴィチーノは、庭園の設計に関しての助言は建築家ヴィニョーラが、彫像などは同じく建築家のピーロ・リゴリオ、アンマナーティ、ジャコモ・デル・ドゥーカらの専門家に協力を得たと見られています。見どころの一つである、かわいらしいドラゴンの石像からは、ラファエロ・ダ・モンテルーポ、シモーネ・モスカ、フランチェスコ・モスカ(イル・モスキーノ)のサインが見つかっていますが、特に彫刻家イル・モスキーノは、庭園全体の構想についてのアドバイスをも行った最も重要な人物の一人と考えられています。

●奇怪な怪物たちは近年、芸術家や知識人により再評価
16世紀の博識かつ良く練られた建築手法で造られたヴィチーノの庭園ですが、同時代の洗練されたイタリアのルネッサンス様式の庭園とは異なるという点で、全く独特なものです。奇怪な像が散らばる珍しい庭園は、マニエリスムのヴィッラのモデルとして、特にヴィテルボの周辺では多くの貴族に模倣されました。

それから400年という月日が流れると、ヴィチーニの庭園はもう誰も訪れる人もなく、すっかり忘れ去られてしまいました。しかし近年になって、根気良く手入れ、修復がされると、聖なる森は見事に復活を遂げます。新たに息を吹き込まれた怪物達は、クロード・ロラン、ゲーテ、サルバドール・ダリ、マリオ・プラーツなどの芸術家や知識人によって再評価されることとなりました。

●石像と自然の見事なハーモニー
それでは、怪物達が住む森の中を覗いてみましょう!
迷路の様に入り組んだ聖なる森には、怪物、神話の人物などが、ヴィテルボの凝灰岩でモニュメントとして彫られ、モットーや碑文が刻み込まれています。怪物だけではなく、神殿、噴水、オベリスク、劇場、ベンチ、壺、霊廟など、異なる要素がそれぞれ独立しており、それらに一貫性もないことから、全くもってエキセントリックな様相を醸し出しています。それらは、謎解きに近く、訪れる人にとって、物理的にも、心理的にも真の迷路となっています。

写真下:Cボマルツォの街にそびえ立つオルシーニ家の城

まずは、入場切符を購入して、お土産物屋さんの前を通過すると、左手にボマルツォの丘に建つオルシーニ家のお城が見えて来ます。ヴィチーノも、あのお城からきっと聖なる森を眺め、色々と構想を練っていたのでしょう!

●怪物公園の入り口からいよいよ入場
少し進むと、いよいよ怪物公園の入口です。オルシーニ家の紋章が不思議な世界へといざなう合図の様に目の前でちらつきます。ゆっくりと門に向かっていると突然、森の中から人懐っこい子猫が現れ、森へと先導してくれました。猫と共にいよいよ入場です。

写真下左:D怪物公園の入口のゲート   写真下右:E人懐っこい子猫

庭園で最初に出会ったのは、ギリシア神話の海の神様、プロテウス・グラウコスです。(写真F)  頭の上に地球を乗せて、その上にお城を建てています。これは世界でのオルシーニ家の権力を意味しています。

写真下:Fおすすめの見どころの一つ、ギリシア神話の海の神様、プロテウス・グラウコス   

続いて、暫く森を散策していると、大きな広場に出ました。松の実の広場(写真G)には、オルシーニ家の紋章を持った一匹の熊と、ローマのバラの花を抱えた熊達がいます。(写真H) かわいらしい熊に癒されました。古代では、ドングリは黄金時代と繁栄を表し、松ぼっくりは死の象徴でした。従って、この広場は無警戒な訪問者にとっては、偽の楽園なのです。何ということでしょう!

写真下左:G広々とした空間が心地良い松の実の広場    写真下右:H松の実の広場のオルシーニ家の紋章を持つ熊

すると、この広場の正面で、ギリシア神話に登場するエキドナに会いました。(写真I) 上半身は女性で下半身はヘビ、背中に翼を持つ怪物です。

写真下:I迫力たっぷりのギリシア神話の怪物エキドナ

●訪問者は芸術と文学に出会い、次々と発見を
庭園では、最初は、論理的な順序や、ストーリー性のないモニュメントの配置に驚きを感じますが、次第に冒険をしているかの様な、恐ろしくも楽しい感覚となって来ます。この悪夢と不思議の森の軽快さは、当時流行していた騎士文学に見られる強い要素で、ヴィチーノは、世界で最も重要な謎に包まれた庭園を実現したいと強く望んでいました。訪問者は、森の緑の中で芸術と文学に出会い、次々と発見をして行きます。
傾斜をうまく活かして造られた庭園の高台の部分には、クーポラ(丸屋根)を持つ神殿があります。(写真J) この神殿は、最初に造られた庭園から20年後に、この世を去った、愛する妻、ジューリア・ファルネーゼの為に建てられました。ポルチコの内側は、オルシーニ家のシンボルのバラと装飾されています。

写真下:Jクーポラを持つ美しい神殿    

今度は、庭園で人気のあるドラゴンと象が視界に飛び込んで来ました。強そうに見えない愛嬌のあるドラゴンです。ドラゴンは、時間と知恵のシンボルで、良く見ると、犬、ライオン、オオカミと3匹の猛獣と戦っています。それぞれの動物は、春、夏、冬の四季を、また、現在、未来、過去を表現しています。大きな象は、カルタゴの将軍ハンニバルがアルプス山脈越えに引き連れた戦象で、鼻で負傷した(もしくは死亡した)ローマ兵を抱えています。(写真KL)

写真下左:K猛獣と戦うドラゴンとハンニバルの戦象    写真下右:Lキュートなドラゴン

その前にあるのは、海の神様ネプチューンとお供のイルカです。(写真M) 大きな彫像も屋外にあるせいか、その存在感がゆったりとしたものに感じられます。 ローマ神話の豊穣の女神ケレスは、木々の間にまるでその場所にいることが当然であるかの様に座っています。(写真N) この像を見たピーロ・リゴリオは、完璧なプロポーションを持つ世界で最も美しい女神だと絶賛しました。

写真下左:M海の神様ネプチューンとイルカ    写真下右:Nローマ神話の豊穣の女神ケレス

●不思議なモニュメントが映えるフォトジェニックな空間
緑色が本当に美しい森の中に不思議なモニュメントが映えます。怪物公園は、写真を撮るのにもぴったりな、フォトジェニックな庭園です。小さい庭園ですので、中で迷って入口/出口まで戻れなくなってしまう危険性もありません。内部には沢なども流れており、森林浴をしながら散策路を何周でも廻りたいところです。

また、庭園の植物相ですが、広さ3ヘクタール(東京ドームの広さは4.7ヘクタール)の森は、主に針葉樹と広葉樹で構成されています。筆者が訪れた8月は、ムクゲの花が満開でした。その他には、野生のリンゴ、ナシ、イチジク、プルーン、クリ、ビワなどの樹木や、バラ、球根植物などが植栽されています。時期ではありませんでしたが、ドングリの木も多く見られました。

園内を流れる沢の近くに置かれていたカメ。(写真O) 怪物と違って怖くないカメは、子供達に大人気だそうです。

写真下左:O子供達に大人気のカメ  写真下右:P傾いた家

傾いた家は、一見すると、外からではそれ程の傾きは感じられません。(写真P) しかし、家の中に入ると平衡感覚を失い、眩暈がする少々危険な家です!
巨人の戦いの像で、そろそろ庭園ともお別れです。(写真Q) 比喩的に、善と悪の戦いを表現する像となっています。貧しい人々から食べ物を盗んだ怪物カークスと戦うヘラクレスは、彼の意図が単なる残虐行為ではなく、道徳的な行為であることを示しています。

写真下:Q最も大きな彫像が圧巻の巨人の戦い  

●緑の中で500年前にタイムスリップも
今回は、美しい森と怪物達の調和が素晴らしいボマルツォの怪物公園についてご紹介しました。静寂の緑の中で目を閉じると、500年という時を駆け抜けて、ヴィチーノが生きていたあの頃にタイムスリップしてしまいそうです。迷路の様な庭園は、木々が生い茂り、夏でも涼しく過ごせます。春から秋にかけては、新緑の美しい季節ですので、皆さまも是非訪れてみて下さい。

著者紹介
阿部美寿穂(あべみずほ)

ローマ県公認観光通訳。ローマ大学卒。地球の歩き方ローマ特派員、公益財団法人日伊協会コラムニスト、たびねすイタリアガイド。植物の専門知識を活かしてイタリアの庭園等も専門的に案内しています。グリーンアドバイザー。

ボマルツォの怪物公園Parco dei Mostri di Bomarzo 関連データ
Dati
■住所
Sacro Bosco, localita Giardino, Bomarzo (VT)

■オープン時間
年中無休。日〜土曜日 8:30〜19:00 (4〜8月)、8:30〜日没まで(9〜3月)。

■入場料
大人11ユーロ
子供(4〜13歳)8ユーロ
0〜3歳までは無料。

■「ボマルツォの聖なる森」公式ホームページ
http://www.sacrobosco.it/

■行き方
ローマ中央駅・テルミニ駅からイタリア鉄道トレニタリアのレジョナーレRegionaleに乗車し、Attigliano-Bomarzo駅(アッティリアーノ・ボマルツォ駅)で下車。所要約1時間。切符は大人一枚5.75ユーロ。その後、駅前から怪物公園までタクシーを利用。タクシーは10分程度で到着。(行きは駅のバールで、帰りは怪物公園の切符売り場などでタクシーを呼んでもらおう)

または、JTB Mybusの日本語オプショナルツアー「ローマ発着 天空のチヴィタ、ボマルツォ怪物公園、丘の町オルヴィエート」で訪れることが出来る。毎週火、水、金、日曜日催行。詳細は、ローマのマイバスデスク(電話:月〜金曜日 9:30〜17:30 06-4825-560)もしくはホームページwww.mybus-europe.jpまで。

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