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ローマとその周辺の庭園めぐり
15 Gennaio 2020

第16回
バニャイアのランテ荘 


文・写真/阿部美寿穂
2011年に「イタリアで最も美しい庭園Il Parco Piu Bello d’Italia」として大賞に輝いた、ローマ郊外のバニャイアにあるランテ荘。ランテ荘は、ローマから北におおよそ100キロメートルのヴィテルボ県の県都、ヴィテルボ郊外のバニャイアという小さな街にあります。

トップ写真:@庭園中央にある「4人のムーア人の噴水」

ランテ荘は、前回ご紹介したボマルツォの怪物公園と共に、イタリアでも最も有名な16世紀のマニエリスム様式の庭園となっており、年間を通して多くの人が訪れる緑が美しいスポットです。今回は、ローマでもジェズ教会やヴィッラ・ジューリアなど多くの作品を残した建築家、ヴィニョーラの傑作と呼ばれる庭園を訪ねてみましょう!

●一度は訪れてみたい小さな町の緑の宝石
ランテ荘は、ラツィオ州の最も北にあるヴィテルボ県の県都ヴィテルボ郊外のバニャイアにあります。ローマからは幾つかの行き方がありますが、全体的にヴィテルボ方面へは鉄道などの公共交通機関の本数が多くない為、乗り換えの駅での待ち時間なども長く、ローマからの距離の近さの割にはややアクセスが不便な印象です。もし訪れるなら、すぐお隣の街、ヴィテルボの観光も一度に併せて楽しんでしまうのも良いと思います。

まだまだマイナーな観光スポットということもあり、あまりガイドブックなどに詳しいアクセスの仕方の情報がないようですので、ここで少しご説明しましょう。

写真下左:Aランテ荘の最寄り駅、ローマ=チヴィタ・カステッラーナ=ヴィテルボ線のバニャイア駅。筆者が訪れた日は、この駅も他の路線上の多くの駅がそうであるように無人であった。  写真下右Bフィウメ通りから見たドゥカーレ宮殿などが建つ旧市街の方向。

まず、バニャイアは人口5500人程のとても小さな街です。街の人曰く、小さな路地が入り組む旧市街はまるで迷路のようですが、迷ってしまっても、少し歩けばまた必ず元の場所に戻って来るので心配はありません。むしろ、中世の佇まいを色濃く残す旧市街を探検してみて下さい!とのことでした。

写真下:C小さなバニャイアの街。マップの左下の方向に見えるのがランテ荘。

ローマから鉄道で行く場合、ランテ荘の最寄り駅は、ローマ=チヴィタ・カステッラーナ=ヴィテルボ線のバニャイア駅となります。バニャイア駅で下車すると、すぐ前に大きなフィウメ通り(Viale Fiume)がありますので、この通りを東の旧市街の方向へ歩きます。すると、大きな教会が2つある9月20日広場(Piazza XX Settembre)に突き当たります。この広場からのびる坂道のヤコポ・バロッツィ通りを上れば1〜2分でランテ荘に着きます。小さなバニャイアの街の22ヘクタール(東京ドーム4.6個分)を占めるのが、イタリア式庭園で有名なランテ荘です。

●イタリアでも指折りの大きなイタリア式庭園
1500年代後半のイタリアのマニエリスム様式を代表するヴィッラとして知られるランテ荘。
庭園の後ろに控える森と、点在する噴水や幾何学模様を持つイタリア式庭園などの人の手が加えられた部分が、絶妙のバランスを持って融合しています。自然と芸術の無理のないハーモニーが、この庭園を訪れる人を静寂でピースフルな空間へ導いてくれます。

写真下左:Dランテ荘に入場するとすぐに右手に見えてくるのがペガサスの噴水。イタリア式庭園は更に一段高い位置にある為、階段を上る。  写真下右E中に入ると、お食事中のかわいい子猫が迎えてくれた。

ヴィテルボの南東5キロメートルのところにあるバニャイアは、古くはヴィテルボの司教達の夏の避暑地でした。元々この場所は、16世紀前半にリアリオ枢機卿が所有する狩りの森として、柵で囲われただけの整備されていない原始的な森でした。枢機卿の死後も、ジョヴァンニ・フランチェスコ・ガンバラ枢機卿の時代まで狩猟目的の森としての機能は続きます。1566年に、ローマ教皇ピウス5世によりヴィテルボの枢機卿として選出されると、彼の中で、同時代の近郊の他のヴィッラ、ティヴォリのエステ荘やカプラローラのファルネーゼ荘のような、森と庭が1つのフェンスで囲まれて共存するタイプのヴィッラを建てたいという意欲が持ち上がりました。ガンバラ枢機卿は、ファルネーゼ家の保護もあり(実母がラヌッチョ・ファルネーゼの未亡人)、ファルネーゼ家お抱えの建築家ヴィニョーラにランテ荘のプロジェクトを依頼します。

写真下:F至る所に見られるシンボルアニマルは貴族の紋章。この門の向こうにイタリア式庭園が広がる。  

ランテ荘は土地の傾斜をうまく利用して造られ、少し高くなった部分からは、幾何学模様が美しいイタリア式庭園と、その背後に広がるバニャイアの街が見渡せるようになっています。

●見どころは幾何学模様と芸術的な噴水
ランテ荘の見どころは、幾何学模様が特徴的なイタリア式庭園と芸術的な噴水達です。イタリア式庭園は、14世紀頃にイタリアで発展した庭園の様式の一つです。イタリアでは、土地の勾配を活かし眺めの良いテラス式の庭であることも多く、しばしば、庭園の中には噴水や洞窟、カスケードなどが置かれ、ツゲなどを刈り込んで作った生垣は迷路のような幾何学模様のデザインがされています。

写真下:Gイタリア式庭園の全景。

このランテ荘のイタリア式庭園は、国内で最も規模の大きなものの一つで、イタリア式庭園を代表するお庭として紹介されます。生垣の模様の部分は緑一色で、シンプルさが日本庭園と似通うところがあるかのようにも思えます。日本国内では、横浜市中区の「山手イタリア山庭園」などで見ることが出来ます。

●庭園の前には双子のような瀟洒な建物
イタリア式庭園の前に建つ瀟洒な建物は、まるで双子のようにそっくりなガンバラ館とモンタルト館です。最初に建てられたのは、庭園を背にして向かって右にあるガンバラ館で、1574年から建物正面のロッジャの部分が、画家ラファエッリーノ・ダ・レッジョ、ジョヴァン・バッティスタ・ロンバルデッリ、パリス・ノガーリなどにより美しいフレスコ画で装飾されました。壁面には、ラツィオ州のルネサンス時代の5つのヴィッラが描かれています。左にあるもう一つのモンタルト館は、建設に携わったモンタルト枢機卿の名に由来し、建築・設計はカルロ・マデルノが行いました。ロッジャの装飾は、画家アゴスティーノ・タッシなどにより行われました。

写真下:Hイタリア式庭園の前に建つガンバラ館、モンタルト館。 
写真下:IJイタリア式庭園 

●庭園中央には彫刻家ジャンボローニャの「4人のムーア人の噴水」
イタリア式庭園の中央に位置するのは、彫刻家ジャンボローニャによる「4人のムーア人の噴水(もしくは正方形の噴水)」です。(トップ写真) 中央の4人のムーア人が支えるのは、ローマ教皇シクストゥス5世の紋章、4つの大きな水槽に浮かぶ小舟からは、子供が水飛沫を立てています。

写真下:Kガンバラ枢機卿の家紋は「ガンベロgambero」、すなわちエビ。   

幾何学模様のイタリア式庭園の背後の丘の急斜面は、上部と下部では16メートルの差があります。ヴィニョーラは、三段のテラスを設けることにより、それぞれが接続され、一番下の入口から勾配のある庭全体を眺めることの出来るように設計しました。テラスに挟まれた2つの斜面は、眺めがばらばらになってしまうことを避けるようにデザインされ、視線が自然と一番上の森が密集した部分にある洞窟風の噴水に引き付けられるようになっています。

写真下左:Lガンバラ館のロッジャの美しいフレスコ画。  写真下右:Mロッジャの壁に描かれるカプラローラのファルネーゼ宮とその庭園。同時代の人達は、近郊にある美しい“ライバル”のヴィッラをどんな思いで見つめていたのだろうか!

庭園の中に点在する噴水の設計は、シエナ出身の水工学に詳しい建築家、トンマーゾ・ギヌッチ、また、1572年からの3年間にかけては、大御所のピーロ・リゴリオも造営に協力しています。

バニャイアのランテ荘は、イタリア式庭園の最高峰とも名高い、歴史ある貴族のヴィッラです。端正に刈られた生垣が大変フォトジェニックなスポットですので、写真撮影にもおすすめです。観光時間の目安は1時間程度ですので、ランテ荘を見学後、バニャイアの旧市街を訪れてみられても良いでしょう。

著者紹介
阿部美寿穂(あべみずほ)

ローマ県公認観光通訳。ローマ大学卒。地球の歩き方ローマ特派員、公益財団法人日伊協会コラムニスト、たびねすイタリアガイド。植物の専門知識を活かしてイタリアの庭園等も専門的に案内しています。グリーンアドバイザー。

バニャイアのランテ荘Villa Lante di Bagnaia 関連データ
Dati
■住所
Via Jacopo Barozzi, 71 Bagnaia (VT)

■オープン時間
1〜2月:8:30〜16:30 (最終入場16:00)
3月:8:30〜17:30 (最終入場16:30)
4月1日〜15日:8:30〜18:30 (最終入場17:30)
4月16日〜9月15日:8:30〜19:30 (最終入場18:30)
9月16日〜10月31日:8:30〜18:30 (最終入場17:30)
11月、12月:8:30〜16:30 (最終入場16:00)

■休園日
毎週月曜日。1月1日、12月25日。

■入場料
大人5ユーロ 注:10月から翌3月までは、毎月第一日曜日は入場無料。(2019年の場合、11〜12月は毎週木曜日も入場無料。2020年以降の詳細はホームページ等を参照のこと。)

■「ランテ荘」の情報
http://www.polomusealelazio.beniculturali.it/index.php?it/243/villa-lante
(イタリア語)
https://www.facebook.com/VillaLante/(公式Facebook)

■行き方
ローマの地下鉄、市バス等を管理する公共交通会社、ATAC(アタック)の運営する鉄道で行く場合:ポポロ広場近くのフラミニオ駅から、ヴィテルボ行きのローマ=チヴィタ・カステッラーナ=ヴィテルボ線(Ferrovia Roma-Civitacastellana-Viterbo)に乗車し、終点のヴィテルボ駅の一つ手前のバニャイア駅で下車。フラミニオ駅からモンテベッロ駅までは鉄道、モンテベッロ駅からカタラーノ駅までは代替えバスの運行が多い。両駅とも、駅前の広場からバスが発着。カタラーノ駅からバニャイア駅までは再び鉄道。所要約3時間。
2019年12月現在、切符は片道4.2ユーロ。
時刻表はhttps://www.atac.roma.it/files/doc.asp?r=6508などを参照のこと。(季節ごとに更新)
バニャイア駅で降りたら、フィウメ通り(Viale Fiume)を東の旧市街の方向へ。ランテ荘まで徒歩5分。

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