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イタリア世界遺産の旅
15 marzo 2008
クレスピ・ダッダ
Crespi d'Adda

ロンバルディア州 Lombardia
カプリアーテ・サン・ジェルヴァージオ
Capriate San Gervasio
ベルガモ県 Bergamo
登録年 1995年
登録基準 文化遺産(iv)(v)



文・写真 牧野宣彦

19世紀の労働者のユートピアとして作られた小さな村、クレスピ・ダッダは、1995年世界文化遺産に登録された。

2005年7月、スカラ座でロッシーニの「チェネレントラ」を見た翌朝、ミラノを出発し、私たちはベルガモに向かった。この日は夏の暑さが身にしみるような日で、歩いていると大粒の汗が噴き出して来た。お昼少し前にベルガモに着いた私たちは、そこからバスで約10数キロのクレスピ・ダッダに行こうと、色々尋ねてバス停を探したが、結局30分経っても見付からず、仕方ないのでタクシーで行くことにした。

町を過ぎると大きなスーパーなどが建ち並び、その後随所に田園風景が見える。走ること20分、タクシーは緑豊かな村に着いた。どこで降りてよいか分らず、一番奥のお墓まで行ってもらった。
なぜ工場や労働者の住居の集まった集落が世界遺産になるのか、そんな疑問を持ったまま、ここからこの村をゆっくり見ることにした。

村の奥にある墓地は入り口に大きな鉄の扉があり、それを入ると中央に大きな道が通っている。その両側に労働者の沢山の小さな墓があった。中央には三角形のタワーがある。これは1906年から1907年にかけてガエターノ・モレッティによって建設されたもので、この村を創設したクリストフォロ・ベニーニョの家族や工場で働いていた労働者が眠っている。

写真トップ:テラコッタとレンガで飾られた平屋建の工場
下左:創設者一家や労働者が眠る墓地、右:高い煙突が印象的な工場入口

墓地を出ると左は緑の林になっていて、沢山の小鳥の美しい声が聞こえてきた。少し歩くと左側に黄土色の細長い工場の建物が見えた。工場の中央には高い煙突があたりを凌駕するように立っている。
工場の前には道を挟んで労働者の家が50軒近く建っている。いずれも2階建ての可愛い家で、庭には芝生が植えられ、小さな畑や樹木が茂り、花も咲いていた。現在も人が住んでいて、日陰で寛いでいるのが見えた。低い垣根はすぐ乗り越えられそうで、隣の人が気軽に声をかけあう事ができる、開放的で親しい雰囲気が溢れていた。

●労働者が働きやすい環境
19世紀の産業革命といえば、工場の煙突からは煙や煤煙が吐き出され、労働者の健康に良くない環境で、資本主義に勝ち残るための過酷な強制労働が横行した。その労働者の悲惨な生活を見たカール・マルクスは、彼らの生活改善の願いをこめて「資本論」を執筆したが、このクレスピ・ダッダは1878年、まだ環境問題などが社会問題になる前に、クリストフォロ・ベニーニョ・クレスピCristoforo Benigno Crespiによって労働者の理想的な町として作られた。労働者のために、職場と住まいが近接した快適な環境をつくったのである。

クレスピ・ダッダはアッダ川とブレンボ川の合流点にある。1889年に建設された古い鉄の橋がかかり、畔には煉瓦色の古い美しい城が見える。中世を思わせるこの城の歴史はそれ程古くない。1893年から1894年にかけて、建築家のエルネスト・ピロヴァノが、クレスピ家のために建設したものだ。

創設者のクリストフォロ・ベニーニョは、マルペンサ空港近くのブスト・アルシツィオBusto Arsizio出身で、家族で紡績業を営んでいた。この労働者の理想郷でも綿織物が作られていた。その後、息子のシルヴィオに受け継がれていったが、1928年の世界恐慌による世界経済の急激な変化を受け、1930年に工場は閉鎖された。
写真左:領主の館、中:教会はブラマンテ派の建築、右:学校

●ストレスを感じない町
私たちはゆっくり日陰で休みながらこの町を歩いた。至る所に腰を下ろせる木陰があり、暑さは全然感じなかった。小さな村にもかかわらず、教会、病院、劇場まであり、人間が生活するのに必要な施設はすべて揃っているようだった。

コルソ・マンゾーニを西の方に行くと、学校と美しい教会があった。学校は1891年から1893年に建てられ、主に技術者の教育がここで行われた。その後ろに劇場、その左に教会が建っている。この教会のドームは美しい幾何学模様の装飾が施され、壁には聖書の一場面が鮮やかな色彩のフレスコ画で描かれていた。学校と同時期に建てられたこの教会の外観は、クレスピ家の故郷ブスト・アルシツィオにあるルネッサンススタイルの教会のコピーで、ブラマンテ派の建築である。

村を一通り見た後、少し小高い場所から全体を見ると、可愛い家が規則正しく長方形の敷地に並んでいるのが見えた。春には各家の庭に真っ白なアーモンドの花が咲くそうで、最も美しい季節といわれる。
緑豊かな並木道を15分も歩くと川が流れていて、アーチの形をした橋や歩道橋などが見えた。これらはいずれも19世紀の終わり頃につくられたものだ。主要な建物の多くが建設された1890年代は、クレスピ・ダッダの最も隆盛した時代だった事が偲ばれる。

この村はどこにいてもフレッシュな空気に溢れ、歩いても全然疲れやストレスを感じない。最初、"労働者の町"と"世界遺産"とが結びつかなかったが、村を散策してみて、何故ここが世界遺産になったのか謎が解けたような気がした。
クレスピ・ダッダでは、他の町では感じることのない心が癒される感じを覚えた。人間にとって一番幸福なのは、安らかな気持ちで日々を過ごし、ストレスがない状態をいうのかもしれないと思った。


データ
Dati

Crespi d'Adda ■クレスピ・ダッダへのアクセス
クレスピ・ダッダはベルガモ県カプリアーテ・サン・ジェルヴァージオ市にあり、ベルガモから16キロ離れている。ベルガモ市内からタクシーで約20分。
本数は少ないが、ベルガモ駅そばからLocatelli社のバスで行くこともできる(Brembate行きまたはBonate行きに乗り、Bonate Sottoで乗り換え。所要時間約1時間。Locatelli社サイト http://www.autoservizilocatelli.it
ベルガモまでは、ミラノ中央駅あるいはポルタ・ガリバルディ駅から電車で約1時間。

ミラノからクレスピ・ダッダまでは約35キロ離れており、タクシーでおよそ30分。

■インフォメーション
Piazzale Vittorio Veneto 1, Capriate San Gervasio
Tel: 02-920991
http://www.villaggiocrespi.it/JAP.htm

注:クレスピ・ダッダは現在も人が居住する村であり、入口や入場時間といったものはない。自由に見学できるが、住民に迷惑をかけないよう注意すること。
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