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イタリア世界遺産の旅
15 febbraio 2008
ヴァルカモニカの岩絵
Arte Rupestre della Val Camonica

ロンバルディア州 Lombardia 
カーポ・ディ・ポンテ Capo di Ponte 
ブレーシャ県 Brescia
登録年 1979年
登録基準 文化遺産(iii)(vi)



文・写真 牧野宣彦

イタリア北部のヴァルカモニカ(カモニカ渓谷)に広がる岩に刻まれた彫刻は、1979年にユネスコ世界遺産に登録された。イタリアで最初に登録された場所である。

2006年の夏、ヴェローナの音楽祭を見た後、妻と私はカ―ポ・ディ・ポンテCapo di Ponteに向かった。
ヴェローナから列車でブレーシャまで行き、そこからローカル線に乗り換える。イタリア中を旅している我々にとっても、この路線は初めてだった。およそ30分も走るとイゼオ湖が左に見え、汽車はゆっくりひと駅ごとに停まりながら、緑深い田園を進んで行った。およそ1時間50分後、列車はカーポ・ディ・ポンテに着いたが、既に他の乗客は一人もなく、駅に降りたのは私たちだけだった。

駅の前には大きな道が走り、それに交差するまっすぐな道が山の方に向かって延びている。道の入り口に八百屋があったので、その日泊まる三ツ星ホテルの名前を言い、行き方を教えてもらった。すると、前のなだらかな街道を左の方に10分ほど歩くとガソリンスタンドがあり、そこにホテルがあるという。タクシー乗り場もないこの町で歩いてホテルに行けると聞き、ほっと胸をなでおろした。

ここは緑豊かなアルプスに近い場所にあり、町はその谷間に開けている。キャリーバッグをひきずりながら10分も歩くと右側に牧場があり、数頭の牛がのんびり草を食んでいた。
ノーベル文学賞を受賞したイタリアの詩人ジュスエ・カルドゥッチは、牛を見て「牡牛」という素晴らしい詩を書いたが、私は牛を見るとすぐ、この日の夕食はビーフ・ステーキを食べる事に決めた。カルドゥッチの気高い文章と比較して自分の発想の貧困さに愕然としたが、とにかく牧場のすぐ前にAgipのガソリンスタンドがあり、3階建ての近代的なホテルが建っていた。
人口わずか2300人の小さな町カーポ・ディ・ポンテには四ツ星のホテルはなく、他に二ツ星が1軒と、一ツ星ホテルが1軒あるだけだった。便利なことに、このホテルと同じ建物にツーリストインフォメーションがあった。

写真トップと下:ヴァルカモニカの美しい風景

●8000年以上前の岩絵
私がこのカーポ・ディ・ポンテに来たのは、ヴァルカモニカにある国立ナクアーネ岩壁彫刻公園Parco nazionale delle Incisioni rupestri di Naquaneを訪ねるためだった。この渓谷一帯では、先住民族カムニ人の描いた岩壁彫刻がトータルで14万点も発見されており、そのうちいくつかの場所が公園・保護地区として制定され、見学できるようになっている。ヨーロッパ最大規模の岩絵群だ。

彫刻は、氷河の侵食で平らになった石の上に精巧に彫られている。その中で一番古いといわれる岩壁彫刻は、今から8000年以上昔の旧石器時代に制作された。その後、新石器、青銅器、鉄器時代を経て、古代ローマ時代まで連綿と作品は描かれていった。
特にこのナクアーネ岩壁彫刻公園では、30へクタールの敷地内に多くの彫刻が点在し、一番大きな大岩石Roccia Grandeには1000以上の岩壁彫刻が刻まれている。

これらの作品を描いた先住民族が、どの様に歴史の舞台から消え去ったかは謎だが、彫刻に刻まれた図柄には、狩猟、農耕、航海、儀式、宗教など当時の人間生活の実態が生々しく表現されている。ユネスコは、この場所を世界遺産登録するにあたり、認定基準の(iii)(vi)を根拠に上げている。まさにこの遺跡は、その彫刻の多彩な構図、技法などが貴重で、2つの登録条件を完璧に満たしている。

この公園は緑の山の中腹にあり、森林ですっぽりおおわれている。インフォメーションでタクシーを呼んでもらい、まずは町全体を上から見るためナクアーネ国立公園とは反対側の山の方にあるセラディナ・エ・べドリーナ市立公園Parco Comunale di Seradina e Bedolinaへ向かった。
電話で連絡を受けたのか一人の若い女性が待っていて、親切に遺跡を案内してくれた。その場所にもかなり多くの岩壁彫刻があり、興味深い図柄も沢山見られた。

私たちはこの遺跡の管理人の親切な女性に礼を言い、次に山の麓の岩壁に聳えるサン・シーロ教会Pieve di San Siroに行った。午後なので中に入る事はできなかったが、この教会の初期の部分は恐らく7世紀頃のもの。1163年にバルバロッサ軍に破壊され、再建されて現在の形になったのは1580年といわれる。
写真:古代人の残した岩壁彫刻の一部

●古代人との出会い
カーポ・ディ・ポンテの町には華やかな商店街などはないが、町の中央にオリオ川Oglioが流れ、その岸辺に何軒か古い民家が見られた。
運転をしてくれたタクシードライバーもとても感じのよい若者で、タクシー代1時間30ヨーロを支払い、私たちは最終目的地のナクアーネ国立公園で降りた。公園の入り口には木造の小屋がある。そこで入場料を支払い、地図をもらって遺跡を見ることにした。

最初のうち光と木影の関係でなかなかよく見えない場所もあったが、中にはっきりと鹿や馬が荷車を引いている図、人間の形などを見ることができた。やっと探していた図柄を発見した時は、古代人の制作への熱い息吹が感じられ、嬉しかった。
恐らくこれを描いた人は、後世の人がその作品を見ることを期待して描いたのだろう。そして今、8000年の時が経過し、作品を通して心が繋がったような不思議な気分に襲われた。今までイタリア中でエトルスキ、ギリシャ、ローマなどの出土品を沢山見たが、このように感じたことなどなかった。懐かしい旧知の友人に会ったような親しみの感情といえるかもしれない。その素朴な彫刻には暖かい人間の心のぬくもりが伝わってきた。

探している図柄がどうしても見つからない時は、名札をつけている係員に同行してもらってその場所を見つけた。しかし最後まで見つからない場所も数箇所あった。
夏にもかかわらず緑に囲まれているので全然暑さは感じない。時折吹く風がフレッシュで心地よかった。

およそ2時間で見学は終わり、帰りは樹木の茂る石畳の下り坂を歩いてホテルまで戻ったが、上りはかなりきつい道のような気がした。天気は少し曇っていた。樹木の間から見える町は、静かで小さかった。彼方に先ほど訪れたサン・シーロ教会が見えた。塔のある教会が緑を背景に聳える姿は美しかった。

歩くこと約一時間でホテルに着いた。日が暮れるととたんに涼しく、真夏にもかかわらず肌寒いくらいだった。ホテル周辺に食事の出来そうな場所は全く見当たらなかったので夕食はこのホテルで取った。部屋はシャワーだけだが、広いテラスがあり快適だった。
翌朝、温かいクロワッサンとカップチーノを飲んだが、とても美味しかった。宿泊と食事でこのホテルの支払いは、二人分73.2ヨーロ。格安な値段だった。
そしてカーポ・ディ・ポンテ8時10分発のバスでミラノに向かった。来る時は汽車でイゼオ湖の左岸を通ったが、今度は反対側の湖畔を通り、ベルガモなどを経由して、11時15分ごろミラノ中央駅に着いた。


データ
Dati

Val Camonica ■カーポ・ディ・ポンテへのアクセス
<電車>ミラノ中央駅からブレーシャBresciaまでイタリア鉄道(ユーロスターで45分、インテルシティで50分、各駅停車で約1時間10分)。ブレーシャでローカル線に乗り換え、カーポ・ディ・ポンテCapo di Ponte駅下車、所要時間約1時間50分。

<バス>ブレーシャからFNMA社のバスで約1時間半〜2時間半。FNMA社 http://www.fnmautoservizi.it
(SAB社のバスがミラノ中央駅から出ていたが、現在はミラノ近郊セスト・サン・ジョヴァンニ発となっており、不便。このバスはベルガモを経由する。ベルガモからカーポ・ディ・ポンテまでは約2時間。SAB社 http://www.sab-autoservizi.it)

■国立ナクアーネ岩壁彫刻公園 Parco nazionale delle Incisioni rupestri di Naquane
Via Naquane, Capo di Ponte (BS)
Tel: 0364-42140
開: 3月1日〜10月14日 8:30-19:30、10月15日〜2月末 8:30-17:00。それぞれ入場は閉場30分前まで。
休: 祝日を除く月曜
料金: 4ユーロ
カーポ・ディ・ポンテ駅から徒歩で約15分。

■宿泊ホテル
ホテル・グラフィッティ・パーク Hotel Grafitti Park
Via Briscioli 42, Capo di Ponte
Tel: 0364-42013 Fax: 0364-426675

■ツーリストインフォメーション
Pro Loco Capo di Ponte
Via Briscioli 42 (上記のホテルと同じ建物)
Tel: 0364-42080/426619
URL:http://www.proloco.capo-di-ponte.bs.it

市のサイト http://www.comune.capo-di-ponte.bs.it
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