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イタリア世界遺産の旅
15 marzo 2008
ヴェネツィアとその潟
Venezia e la sua Laguna

ヴェネト州 Veneto
ヴェネツィア県 Venezia
ベルガモ県 Bergamo
登録年 1987年
登録基準 文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)




文・写真 牧野宣彦

アドリア海の真珠といわれ、その美しさを称えられているヴェネツィア。世界におよそ850ヶ所存在するユネスコの世界遺産の中でも、最もステイタスが高いのがヴェネツィアであろう。それが証拠に、文化遺産の登録基準6つすべてを満たしている。これだけでもここが世界一の文化都市であることがわかる。

まず、ラグーナ(潟)に数百万本の杭を打ち、その上に町を建設したという事実が人間の創造性を示している事。ヴェネツィア独特の建築様式、そしてティントレット、ヴェロネーゼなどが描いたフレスコ画が他国に影響を与えた事。13世紀から16世紀にかけてヴェネツィアが最も繁栄した時代の建築は、キリスト教様式とビザンチン様式の融合したものであり、代表的なものとしてサン・マルコ大聖堂などが残っている事。パラッツォ・ドゥカーレや広場などが他に類を見ない都市空間を生み出しており、118の浮島に建設された町が伝統的集落に当たる事。十字軍の出発港だった事など、ヴェネツィアは歴史・文化の面から見て大変重要な町なのである。

写真トップ:運河に浮かぶようなヴェネツィアの町
下左:独特の建築様式が美しいサン・マルコ大聖堂、右:政治の中心だったパラッツォ・ドゥカーレ

●ヴェネツィアの繁栄と衰退
ヴェネツィアの起源については色々言われているが、最近の研究によると、この地に人が移住したのはローマ時代に遡る。6世紀にランゴバルト族が侵入した際、「ヴェネツィア」即ちアウグストゥス10管区の住民たちが、ラグーナに点在する小さな100以上もの島々へ避難し、町を建設した。最初に彼らが到着した所は、トルチェッロ島だった。

ヴェネツィアは敵が攻めにくいラグーナに逃げ込んだと、一般に言われている。そのような要因もあったが、一番の理由は、この地がビザンティン帝国に属していたことにある。フランク族もランゴバルト族も、ビザンチン帝国との協定により足を踏み入れる事が出来なかったのである。
その後、7世紀に最も古い居住地があったところにサン・ピエトロ・カステッロ教会、そして町の最先端のドルソドゥーロ地域にサン・ニコロ・ディ・メンディコリ教会が建設され、東西の境界がつくられた。その内部に現在も見られる様な町が建設されていった。

1096年に十字軍の遠征が始まると、ヴェネツィアは軍隊の出発する拠点となり、ヴェネツィア商人達は通商のために地中海へ乗り出して行く。1204年にはコンスタンティノープル占拠という軍事的勝利により、東ローマ帝国の4分の3を支配。13世紀初頭、国力は絶頂に達した。
その後、アフリカ周遊を終えたヴァスコ・ダ・ガマがリスボンに凱旋するまでの約300年間、ヴェネツィア商人はエジプト、シリアなどへ遠征し、香辛料、綿、絹などの交易により莫大な富を得た。当時のヴェネツィアは、現在国際経済を左右するロンドンやニューヨークといった都市に匹敵する地位を持ち、世界に君臨していた。

しかし、1492年のコロンブスの新大陸発見により、世界経済の中心はスペインのセヴィリア、ポルトガルのリスボンに移って行き、地中海ではオスマン・トルコが台頭、ペスト流行による人口の減少などの要因が重なり、ヴェネツィアは徐々に衰退を始める。
そして、1669年に地中海貿易で最も重要であったクレタ島を失い、ヴェネツィアの政治的、経済的繁栄は終わりを告げた。

●芸術の黄金時代
その一方で、ヴェネツィアは16世紀に建築、美術において黄金時代を迎えた。パッラーディオ、ロンゲーナ、サンソヴィーゾ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼなどの巨匠が次々と現れ、ヴェネツィア内の多くの宮殿を飾った。

フィレンツェで1597年に誕生したオペラも、1637年に世界最初の公開オペラハウス、サン・カッシアーノが出来ると、その中心はヴェネツィアになり、モンテヴェルディなどが傑作を作曲。その繁栄は18世紀前半まで続いた。器楽においても、アルヴィノーニ、ヴィヴァルディ、べネデット・マルチェッロなどが傑作を残した。

そして、17世紀から18世紀にかけて世界でも珍しい劇場都市に変貌する。ゴルドーニ、ゴッツィなどの劇作家が多くの優れた作品を書き、演劇が栄えた。当時ヴェネツィアには17の劇場が存在していたといわれ、オペラ、演劇などが毎夜盛んに上演されていた。

ヴェネツィアの栄光は、ナポレオン・ボナパルトの侵入により幕を閉じる。1797年、ヴェネツィアの共和制は終止符を打った。一時フランスに支配されたヴェネツィアは、その後オーストリアの支配下となり、その支配は1866年にイタリア王国に編入されるまで続いた。

写真左:カナル・グランデにかかるリアルト橋、右:にぎわうサン・マルコ広場

●美しいヴェネツィアの必見ポイント
私がヴェネツィアを最初に訪れたのは1972年。それ以来ボローニャからの日帰りなどを含めると20回以上は訪れているが、いつ見てもカメラを向けたくなるほど、ヴェネツィアは美しく魅力的である。沢山の見るべき箇所があるが、私はその中で10の場所を紹介しよう。

カナル・グランデCanal Grande。町を二つに分ける大運河。「世界中で恐らく最も美しい道」と讃えたヴェネツィアの貴族たちは、この運河沿いに豪華なパラッツォを建てた。カ・レッツォ二コ、近代美術館になっているカ・ペーザロなどの美しい宮殿が立ち並ぶ。
カナル・グランデにかかるリアルト橋Ponte di Rialtoは、1591年にアントニオ・ダ・ポンテによって再建された。それ以前は木造で、1496年のカルパッチョ作「聖十字架の奇跡」では、木製の橋が描かれている。ゲーテが述べているように、リアルト橋の上から見るカナル・グランデの景観も素晴らしい。

サン・マルコの鐘楼Campanile di San Marco。サン・マルコ広場に建つこの塔の高さは96.8m。12世紀に建設されたが、1902年に崩れ落ち、同年に再建された。塔の上からは、サン・マルコ大聖堂の丸いドームや港、レンガ色の屋根など素晴らしい眺望が楽しめる。

サン・マルコ大聖堂Basilica di S.Marco。828年にエジプトのアレキサンドリアから運ばれた聖マルコの遺体を祭る為に、ロマネスク・ビザンチン様式で9世紀に建設された教会。ヴェネツィアの公共活動の中心で、総督の就任式などが行われた。その後、聖マルコはヴェネツィアの守護聖人になり、彼のシンボルであるライオンはヴェネツィア共和国のシンボルとなった。
前の広場はイベントなどで賑わう。ムーア人像が鐘をつく時計台が広場のシンボルになっている。ヴェネツィアでは広場のことを通常"カンポCampo"というが、サン・マルコ広場だけは"ピアッツァPiazza"と呼ぶ。

パラッツォ・ドゥカーレPalazzo Ducale。サン・マルコ広場に面したこの宮殿には、世界最大のフレスコ画、ティントレットがダンテの「神曲」の一篇を描いた「天国」がある。その他、ヴェロネーゼ、カルパッチョ、ティツィアーノなどの絵画で埋め尽くされている。
ここはヴェネツィア歴代のドゥージェ(総督)の住まいだった場所で、ヴェネツィア共和国の政治の中心だった。ヴェルディのオペラ「2人のフォスカリ」は、このパラッツォ・ドゥカーレが舞台となっている。

サンティ・ジョヴァンニ・エ・パウロ教会 Santi Giovanni e Paolo。この教会は1246年から1430年にかけてドメ二コ会によって建設されたゴシック様式の教会で、共和国の総督の葬儀に使われた。歴代の総督のお墓があり、絵画ではジョヴァンニ・ベッリー二の「聖ヴィンチェンツォ・フェッレーリの多翼祭壇画」、ロレンツォ・ロットの祭壇画「聖アントニウスの施し」、天井にはパオロ・ヴェロネーゼの油絵がある。
外にはヴェロッキオが制作したバルトロメオ・コッレオー二騎馬記念像がある。

アッカデミア美術館Galleria dell'Accademiaには、14世紀から18世紀のヴェネツィア派絵画のコレクションが多数展示され、その中には、ヴェロネーゼ、ティツィアーノ、ティントレット、ジョヴァン二・ベッリーニ、カルパッチョ、ティエポロなどの優れた作品が鑑賞できる。

写真左:"黄金の館"カ・ドーロ、右:サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会

カ・ドーロCa' d'Oroはヴェネツィアゴシックを代表する建物。B.ボンとラベルティによって建てられた。かつてファサードが黄金に塗られていたので、カ・ドーロ(黄金の館)と呼ばれる。ポンキエッリのオペラ「ラ・ジョコンダ」3幕はこのカ・ドーロが舞台で、豪華な館でバレエ「時の踊り」が踊られる。
現在ここはフランケッティ美術館になっていて、マンテーニャの「聖セヴァスティアーノ」やグアルディの作品などがある。

サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会S.Maria Gloriosa dei Frariは、ヴェネツィアで最も重要な教会の一つ。フランチェスコ会修道士達によって1340年から1430年にゴシック様式で建設された。
内部には、ジョヴァンニ・ベッリー二の傑作「聖母と諸聖人の三翼祭壇画」、ティツィアーノの「被昇天の聖母(Assunta)」がある。この絵はティツィアーノの最大傑作の一つで、ワーグナーは両手を広げて天に昇る聖母マリアを見て「マイスタージンガー」の完成を決意したといわれる。
また、カノーヴァが自分でデザインし、弟子が制作したA.カノーヴァの墓碑や、ヴェネツィアオペラ隆盛の基礎を築いた作曲家モンテヴェルディのお墓もある。

スクオラ・グランデ・ディ・サン・ロッコScuola Grande di S. Roccoは、1516年から1560年に建設された。ティントレットが描いた大きな油絵の連作「エジプトへの逃亡」「マグダラのマリア」などが飾られている。特にキリストが十字架を背負ってゴルゴダの丘を登って行く絵は、キリストの苦悩がひしひしと伝わってくる迫力のある絵で、鮮烈な印象が残っている。

カナル・グランデの入口にあるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会S.Maria delle Saluteは、ヴェネツィアバロック様式の最大傑作で、半円形の巨大なクーポラを持っている。ペストの終焉を感謝するためにバルダッサーレ・ロンゲーナによって17世紀に建設された。
内部にはティツィアーノの「聖マルコと書聖人」、ティントレットの「カナの結婚」といった名画がある。

ムラーノ島は13世紀末にヴェネツィアン・グラスの職人たちが住んだ場所で、ヴェネツィアン・グラスの製造地になっている。
その他ラグーナには、ヴェネツィア映画祭が開催され、トーマス・マンの小説「ヴェニスに死す」の舞台となったリド島、レース織りが盛んなブラーノ島、ヴェネツィアを愛したロシアの音楽家ストランヴィスキーの墓があるサン・ミケーレ島などがある。

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ヴェネツィアは今、水没の危機に瀕している。2006年のNASA(アメリカ航空宇宙局)の発表によると、南極の氷塊が溶け出しており、その量は一年に152立方キロ。およそ東京ドーム12万個分の量の氷が溶けて流れ出しているという。2040年には北極を覆っている氷が全て消滅すると言われている。
近い将来ヴェネツィアは、危機遺産に登録される可能性がある。おそらく21世紀後半に生きている人たちは、世界一偉大で、美しいヴェネツィアを見る事ができないだろう。とにかくどんな犠牲を払ってでも、この美しい人類の遺産を保護すべきだと思う。


データ
Dati

Venezia ■アクセス
<電車>
ヴェネツィア本島の鉄道駅はヴェネツィア・サンタ・ルチア駅Venezia Santa Lucia。一つ手前のメストレ駅Mestreは陸地にある。ヴェネツィアに行く電車はどの方向から来たものでもこのメストレを通るが、インターシティ(IC)のなかにはメストレ止まりでヴェネツィアまで行かないものもあるから注意。
ミラノ中央駅からヴェネツィア・サンタ・ルチア駅までユーロスター(ES)で2時間20分。ローマ・テルミニ駅からは約4時間半。
<空港>
マルコ・ポーロ空港は陸地にあり、ヴェネツィアへはバスでローマ広場まで行くか(約30分)、アーリラグーナAlilagunaのボートでムラーノ島、リド島経由でヴェネツィア本島まで行く(ヴェネツィアまで1時間20分)。ブルーラインのヴェネツィアの発着地はサン・ザッカリア(ホテル・ヨランダ前)San Zaccaria (Jolanda)とサン・マルコ(ジャルディネット)San Marco (Giardinetto)、レッドラインはザッテレZattereとサン・マルコ(ジャルディネット)。

■インフォメーション
Ufficio Informazioni e di Accoglienza Turistica(IAT)
Stazione Santa Lucia(サンタ・ルチア駅内)
Tel: 041‐5298727、041‐719078
開: 8:00-18:30 (1月1日、12月25日は休)

San Marco all'Ascensione (サン・マルコ広場内)
Tel: 041-5298711
開: 9:00-15:30(1月1日、12月25日は休)

サイト http://www.turismovenezia.it

ヴェネツィアについては『私の住む町案内・ヴェネツィア』おすすめ一日観光コースもご参照ください。

■その他
サン・マルコ大聖堂 Basilica di S.Marco
San Marco 328
Tel: 041-5225205
開: 夏季(復活祭〜10月末) 月〜土 9:45-17:00、日・祝日 14:00-17:00。冬季(11月〜復活祭まで)月〜土 9:45-17:00、日・祝日 14:00-16:00
入場無料(ただし、博物館、パラ・ドーロ、宝物館は別)
http://www.basilicasanmarco.it

サン・マルコの鐘楼 Campanile di San Marco
開: 復活祭〜6月 9:00-19:00、7月〜9月 9:00-21:00、10月 9:00-19:00、11月〜復活祭 9:30-15:45
料金: 8ユーロ
http://www.basilicasanmarco.it

パラッツォ・ドゥカーレ Palazzo Ducale
San Marco 1 (入口はPiazzeta San Marco)
Tel. 041-2715911
開: 夏季 9:00-19:00、冬季 9:00-17:00
休館日: 1月1日、12月25日
http://www.museiciviciveneziani.com/frame.asp?musid=8&sezione=musei&tipo=

サンティ・ジョヴァンニ・エ・パウロ教会 Santi Giovanni e Paolo
Campo Santi Giovanni e Paolo, Castello 6363
Tel: 041-5235913
開: 7:30-18:30

アッカデミア美術館 Galleria dell'Accademia
Campo della Carit?, Dorsoduro1050
Tel: 041-5222247
開: 月 8:15-14:00、火〜日 8:15-19:15
休館日: 1月1日、5月1日、12月25日
http://www.gallerieaccademia.org

カ・ドーロ Ca' d'Oro
Canareggio 3932
Tel. 041-5222349
開: 月 8:15-14:00、火〜日 8:15-19:15
休館日: 1月1日、5月1日、12月25日
http://www.cadoro.org

サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会S.Maria Gloriosa dei Frari
Campo dei Frari, San Paolo 3072
Tel: 041-5222637
見学可能時間: 月〜土 9:00-18:00、日・祝日 13:00-18:00
料金: 2.5ユーロ(教会内の芸術作品を見るために必要)
http://www.basilicadeifrari.it

スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ Scuola Grande di S. Rocco
San Paolo 3054
Tel: 041-5234864
開: 3月28日〜11月2日 9:00-17:30、11月3日〜3月27日 10:00-17:00
料金: 7ユーロ
http://www.scuolagrandesanrocco.it

サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会S.Maria delle Salute
Campo della Salute, Dorsoduro 30124
Tel: 041-2743911
開: 9:00-12:00/15:00-18:00
http://www.japanitalytravel.com
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