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シチリアの祭りを訪ねる旅
15 Luglio 2017

第 8 回
ギリシャ正教の復活祭  
 ピアーナ・デリ・アルバネーズィ   



  文と写真  桜田香織 


●ギリシャ正教を信仰する不思議な村
バチカンのお膝元であるイタリアではそのほとんどの国民がキリスト教カトリックであることは皆さんもご存知だと思いますが、実はパレルモ県には不思議な村が5つあります。その1つがピアーナ・デリ・アルバネーズィ(Piana degli Albanesi)。  

写真トップ@アルバニアの民族衣装をまといストリートを行進
写真下AB美しい民族衣装をまとった村の人々。色やデザインが様々。

何が不思議かというとここの人々はギリシャ正教を信仰しているのです。元をたどれば同じキリスト教ですが、11世紀に教義上の意見の違いで枝分かれしたカトリック教会と正教会、詳しい違いはここでは割愛しますがクリスマスや復活祭の時期が多少ずれ、又それに伴う儀式も異なります。 

●15世紀にアルバニア人がこの村を形成
オスマントルコの侵入から逃れたアルバニア人がここへたどり着き村を形成したのが15世紀後半、少しずつ人口も増えて現在では6000人を少々上回るほどになりました。そして彼らは未だにアルバニア語で会話をし、アルバニアの伝統を守っているのです。といっても当時のアルバニア語だそうで、現代のアルバニア人には通じないとか。そして実際はそこにシチリア方言が混ざり、私には理解できない言葉で話していました。もちろん普通のイタリア語も話しますよ。    

写真下左Cギリシャ正教はビザンチンが発祥、この村にもギリシャやビザンチンの美術品などを売るお店が存在している  写真下右Dイタリア語とアルバニア語のバイリンガルの看板

●村はイタリア語とアルバニア語の二ケ国語表記
さて私は今年の4月、ピアーナ・デリ・アルバネーズィの復活祭へ行ってきました。この村の復活祭はとても素晴らしいと定評があり前から行きたかったのですが、なかなか予定が合わず数年が過ぎ、やっと念願叶っての実現です。パレルモから約24Km、標高720mの村に近づくとまずは看板に目が止まります。看板は全てイタリア語とアルバニア語の2ヶ国語表記。日本とは違いパレルモやカターニアのような大都市でも英語表記すらないシチリアなのに、こんな小さな村でバイリンガルとは!  

写真下左Eピアーナ・デリ・アルバネーズィの母教会の内部。 写真下右F同教会の祭壇。

   
●母教会でギリシャ正教の御ミサ
小さな村のメインストリートに位置する母教会は早い時間から人が集まり始まり、さすが定評があるだけあって、観光客の姿も沢山目にしました。ミサの開始前気が付くと教会内は満員御礼、立っている人も大勢います。

  写真下左Gギリシャ正教の神父様。黒い山高帽が特徴として知られている
写真下右H祭壇に向かってミサが進行する。キリスト教とは異なるやり方。 ギリシャ語で行われる。
  写真上左I地元の人と観光客で満員御礼の教会内  写真上右Jミサ終了後、民族衣装をまとった人達による行進を見ようと、人々が 集まってすごい混雑

ギリシャ正教の御ミサに参列するのは生まれて初めての事でしたが、神父様は祭壇に向かってお祈りを捧げるので、私達は神父様の背中を眺めながらの進行になります。 途中もちろんこちらに向かってお説教をしたり、祝福を捧げてくださいますが。

●民族衣装でストリートを行進し赤い卵を配る
ミサが終わると今度はアルバニアの民族衣装に身を包んだ地元の方々がメインストリートを行進し、赤く色付けした茹で卵を配ります。赤い卵の意味は幾つか説があるのですが、「キリストの血の色、血は生命を表す事から復活の喜びを表す」というのが一番強い理由のようで、これまた彼らの祖国の伝統。   

写真上左K民族衣装でストリートを行進    写真上右L復活のシンボルである赤い卵を配る人達。
写真上M赤い卵を配る若者。

●先祖代々の深い思いが染み込む見事な民族衣装
そして民族衣装の見事な事!しかもこれは何百年もの間親から子へ、子から孫へと受け継がれてきたというのですから、大変な貴重品であります。オスマントルコの侵入から逃れるために祖国を捨てた人達、その彼らが必死の思いで持ち出した衣装や装飾品を、傷めば手直しを加え今に至ったという事は、先祖代々の強く深い思いが染み込んでいる宝物でしょう。そして復活祭という晴れの日にその衣装に袖を通し、心の底からお祝いをしている様子が村人の表情から伝わってきます。   

写真上左N細部の装飾も美しい民族衣装。
写真上右O後ろ姿も見事、金の糸で刺繍が施されている衣装は高価なものであることがわかる   

この行進が終わると地元の方々は帰路へ、この後は家族で復活祭のランチを楽しむという流れです。そして取り残されたのは観光客、余韻がほとんどなくあっという間に終わってしまった感じで、これ又シチリアらしくない感じ。大切な衣装を汚さない為でしょうか?

●この地に移り住んだ人々が祖国を想う日
通常復活祭と言えば、「キリストの復活を祝う」が目的なのですが、ここではそれだけではないように思えました。もしかしたらそれはイタリアのこの地に移り住んだ彼らが、イタリア人でありながらアルバニアを想い、再認識する日であるのでは?今ではもちろん祖国へ足を伸ばした方も多いかと思いきや、私がお話を伺った何人もが一度も行った事がないとおっしゃります。   

  写真下PQ美しい民族衣装をまとった人たち

それでも500年もの間、見た事のない祖国を慈しみ、言葉を保ち、習慣や伝統を守り続ける事ができる彼ら。そして祖国に対する誇りを持ち続ける彼ら。晴れやかな顔の後ろにはきっと私には想像もつかない強さを持ち合わせているような気がします。シチリアの小さな村で時々遭遇する、確固たる自信を持ち前進し続けている彼らのような人々に、私はいつも深く感動するのでありました。  


著者プロフィール
桜田香織(Sakurada Kaori)

東京都出身。日本航空の国際線客室乗務員として勤務していた頃からイタリアに魅せられ、「いつかイタリアへ・・・」と夢見ながらイタリア語を学ぶ。休職して渡伊、フィレンツェに8年住んだ後縁があってシチリア島へ移り、パレルモ在住。通訳、TVコーディネーターをするかたわら趣味の写真にも力を入れ、2013年にはパレルモ市のイベントで写真展を実現。夫と連名で出版した「Settimana Santa in Sicilia-Cerca di Collesano」(シチリアのイースター週間・コッレザーノの聖金曜日)でも写真を手掛ける。シチリアの料理に深い関心を持ち、レシピだけではなくその歴史のリサーチを続けている。2014年度、NHK TVイタリア語テキストに連載を持ち、シチリアの魅力を伝えている。

シチリアの祭りを訪ねる旅 データ
Dati
■ピアーナ・デリ・アルバネーズィ 
 (パレルモ県 ピアーナ・デリ・アルバネーズィ町 Comune di Piana degli Albanesi)
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