JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
トスカーナの小都市を旅する
15 ottobre 2012

第9回 モンテプルチャーノ&ピエンツァ 世界が認める田園風景
  

文・写真/菅澤彰子 
今回は、トスカーナ南部の内陸、モンテプルチャーノとピエンツァという、2つの町を訪れたい。いずれも、丘陵地にあって、町からは美しい田園風景を見渡すことができる(写真@)。モンテプルチャーノではD.O.C.G.の赤ワインが、ピエンツァでは羊の乳からつくるペコリーノチーズが有名だ。トスカーナ最高級ワインの一つ、ブルネッロの産地であるモンタルチーノもこのエリアで、食文化の面でも注目を集める地域である。

2004年にオルチャ渓谷がユネスコの世界遺産に指定されてから、このあたりは、すっかり有名になった。オルチャ渓谷とは、5つの小さなコムーネ(町)にまたがる、シエナ県南部の広大なエリアだ。

オルチャへ行く方法はいくつかあるが、旅行者ならば、そもそも昔からのシエナの土地へ行くのだから、不便でもシエナからバスに乗って1時間ほど揺られてみるのが一番面白いだろう。車中、ごつごつした粘土質の岩肌が見える。世界で美しい風景だなどと形容されるにしては、オルチャの谷の田園は、詩的ながらなんとも厳しい表情だ。

●ワインの里 モンテプルチャーノ
正直なところ私は、モンテプルチャーノはオルチャ渓谷にある、としばらく長いこと思っていた。ピエンツァはオルチャ渓谷を代表する町のひとつだが、ここから10km余り離れるだけで、つまり車を10分走らせるだけで、そのエリア外になる。モンテプルチャーノはキアーナ渓谷と呼ばれる地域にまたがるところだ。

トップ写真: @モンテプルチャーノの町から望む田園風景
写真下:Aワインの里らしい街並み 

モンテプルチャーノを歩いてみると、いかにもワインの産地らしい街並みだ(写真A)。ワイナリー、ワインショップ・・・、まずワインが目に飛び込んでくる。路地に張り出して食事のできるテラスレストランも多い。夏のバカンスをのんびり楽しむには、最高だ。ただ今回、私が夏季に訪れたせいもあるかもしれないが、以前に行った時に比べて、「いかにも」観光向けの要素が目立っており、その点では残念に思った。

 写真下:Bメインストリートの魅力的な辻空間

●中世の要素にルネサンスのテイストの混ざる町
モンテプルチャーノの地形は、丘といっても海抜が高く、600mを超える。旧市街は南北に細長いが、その距離は1kmにも満たない。町を南北に貫く、起伏のある曲がりくねった一筋のメインストリートを歩くと、魅力的な辻に出会う。この町の象徴ともいえるプルチネッラの鐘の塔 Torre di Pulcinella 聖アゴスティーノ教会 Chiesa di S.Agostino のある辻だ(写真B)。中世然とした塔のてっぺんに立つプルチネッラの人形はただの飾りではなく、時計と連結されており、人形が鐘を鳴らす仕掛けになっている。一方、聖アゴスティーノ教会のファサード(正面)は、15世紀の建築家ミケロッツォの作品で、高低差のある大通りから大階段で持ち上げられ、細部までつくりこんだ優美な姿を見せている。この町の都市空間の特徴は、この辻の広場がよく物語っていると思うのだが、こうした中世の要素に、ルネサンスのテイストが混じり合っている点である。
写真下左:Cピアッツァ・グランデにある市役所    写真下右:Dピアッツァ・グランデに立つ大聖堂

この町の広場といえば、やはり「ピアッツァ・グランデ Piazza Grande」だ。市庁舎 Palazzo Comunale が聳え、大聖堂 Duomo が構える(写真CD)。この中心広場もやはり、ミケロッツォが15世紀に設計したが、大聖堂のファサードは未完成のままだ。夏には、8つの地区対抗の樽転がし競争 Bravio delle Botti や、地域独特の伝統的な民衆演劇ブルシェッロ Bruschelloが催される場所でもある。

こうした広場や大通りの裏側には、勾配のある狭い路地が走る。ときには階段の道だ。そうしたところを歩くと、住人の日常の風景に出会い、この町本来の姿を垣間見ることができるだろう。

●ルネサンスの理想都市 ピエンツァへ
さて次に、ピエンツァを訪れよう。ここは、もっとずっと小さい町である。旧市街は東西に細長いが、その距離は500m程しかない。町の南端の断崖から望む、田園のパノラマ風景は素晴らしい。やはりこれも夏だったからだろうが、町のスケールの割には、人が多すぎる。人口は周辺地域を含めて2千人余りというのだから、そのほとんどが観光客だ。モンテプルチャーノ同様、アメリカからの旅行者が目立つ。同じトスカーナでも、私の住む海岸地方にドイツやスイスからのバカンス客が多いのと対照的だ。ピエンツァは、メインストリートさえも狭いから、もし団体客にでも出会えば、道が完全にふさがれてしまう。そのくらいデリケートな街並みだ (写真E)。

写真:E非常に狭いピエンツァのメインストリート


ピエンツァは、ルネサンスの理想都市としてその名を知られている。つまり、ルネサンスの時代につくられた計画都市だ。しかし、まったく何もないところに白紙の状態から図面を引いて・・・、という感じではなく、既存の中世の町をルネサンス式に仕立て直したそうだ。確かに、町を歩くと、そこは中世のスケール感である。

市門をくぐって150mも歩けば、中心広場に着く。かの有名な、ピオオ二世広場 Piazza Pio IIだ(写真F)。もともとはここに中世の広場があったらしいが、芸術的に絶賛される現在の姿は、ルネサンスの装いで優美な統一感がある。大聖堂 Duomo、ピッコローミニ館 Palazzo Piccolomini市庁舎 Palazzo Pubblico などに囲まれている。どうしても空間が限られていたようで、狭い広場を、ルネサンスの透視法を取り入れて、少しでも広く見えるよう工夫がされたという。

ピオ二世とは、生まれ故郷のこの町をルネサンス理想都市にしようと思い立った人物で、時のローマ教皇である。この一帯を領土としていた名門貴族ピッコローミニ家の出身だ。彼が採用したのは、ロッセッリーノというフィレンツェの建築家で、時の万能人アルベルティの著した『建築論』を積極的にとりいれ、理想的なルネサンスの広場をつくりあげた。メインストリートに沿っても、ルネサンス様式の貴族の館が立ち並ぶ。

写真下左:Fピエンツァのピオ2世広場に立つ大聖堂  写真下右:G大聖堂内部に浮かび上がるピッコローミニ家の紋章ト


●是非訪れたい明るい陽光の差し込む大聖堂
最後になったが、ピエンツァを訪れたなら、ぜひ大聖堂の中へ入ってみてほしい。思いのほか、明るく感じることだろう。ルネサンス理論でデザインされたファサードとはうらはらに、後陣は背の高いゴシック風の尖頭アーチの開口部の連続で、そこから明るい陽光が強く差し込む。通常、ゴシック様式の教会ならば、色ガラスを組み合わせて聖書のモチーフにちなんだ模様を描き、いわゆるステンドグラスがはめ込まれるところだが、ここでは無色透明のガラスがふんだんに使われている。近づいてみて、そのわけがわかった。ピッコローミニ家の紋章が、くっきりと窓に浮かび上がる仕掛けなのだ(写真G)。紋章は聖堂内の数カ所にあり、まるで貴族のプライベート礼拝堂さながらの雰囲気だ。大聖堂でこういうのは、まず他には類を見ない珍しい例だろう。

トスカーナの小都市を旅する  著者プロフィール
菅澤 彰子(すげさわ・あきこ) 

トスカーナの丘陵地にたたずむ小さな中世の町、マッサ・マリッティマに在住。 工学修士、専門は建築・都市史。学芸員の資格を持つ。日本の大学院在学中、イタリア政府給費生として、バーリ大学建築学部へ研究目的で留学(1996-97年)。 これまでの論考には『南イタリア都市の居住空間』(中央公論美術出版 2005年)など、プーリア、シチリア、サルデーニャ関連のものがある。トスカーナに関しては、『日伊文化研究』(日伊協会 2010年)、『イタリア文化事典』(丸善出版 2011年)へ執筆。 一方で、2007年より旅のコーディネートを行う。日本からの旅人たちと触れ合いながら、深みのある本物のイタリアを伝えることを信念としている。
URL http://www.sugesawa.com/

モンテプルチャーノ Montepulciano  関連データ
Dati
■標高 標高 605 m / モンテプルチャーノ市(シエナ県) 人口14,558人(2010年末現在)

■現地交通機関によるアクセス
フィレンツェから列車にて約1時間のキウジChiusi- chianciano Terme 駅よりバスで約50分。シエナ、アレッツォ、フィレンツェなどからもバスがあるが、いずれも本数が少ない。

■観光情報局 Pro-Loco
Piazza Don Minzoni 53045 Montepulciano(SI)
Telefono 0578 757341
http://www.prolocomontepulciano.it

■教会などは無料で見学可能。市庁舎の塔へ上るには有料(1.60ユーロ)。

ピエンツァ Pienza 関連データ
■標高 491 m / ピエンツァ市(シエナ県) 人口2,186人(2010年末現在)

■現地交通機関によるアクセス
モンテプルチャーノからバスで約15分。

■市役所観光情報局
Comune di Pienza/Ufficio Informazioni Turistiche
Corso il Rossellino, 30 - Pienza
Tel & Fax: 0578749905
info.turismo@comune.pienza.si.it

■観光情報局 Pro-Loco
via delle case nuove, 4 - Pienza
www.prolocopienza.it
prolocopienza@gmail.com

■ピッコローミニ館 Palazzo Piccolomini
冬季 10月16日- 3月14日 10:00-16:30 (月曜休)
夏季 3月15日 - 10月15日 10:00 - 18:30 (月曜休)
12月25日と1月1日  14:00-18:00
閉館時期 1月7日-2月14日、11月16日-11月30日
※要予約 Tel :0039 (0)577 286300
入場料: 7.00 ユーロ

■教会などは無料で見学可能。

「トスカーナの小都市を旅する」連載に寄せて
著者からのメッセージ


トスカーナといえば、州都のフィレンツェのみを駆け足で訪れる人が今もまだ少なくありません。フィレンツェの所有する歴史文化遺産は素晴らしく、いくら見ても見切れないもの。でも、その一方で、都会的な騒々しさや溢れかえる観光客に圧倒されてしまうこともあるでしょう。そういったときには、気晴らしに小さな町を訪れてみてはいかがでしょうか。トスカーナには、魅力ある小さな町がたくさんあります。意外なことかもしれませんが、多くのイタリア旅行者たちが、そういった町での散策が、旅の一番の記憶として印象に残っていると口をそろえて言うのです。この連載では、ゆったりと静かに味わうことのできる、"トスカーナらしさ"を存分に残している中小規模の町をいくつか紹介していこうと思います。私の専門である建築・都市の視点を取り入れ、旅人たちをトスカーナにいざないます。そしてなお、"ここに住む者ならでは"のテイストを感じ取っていただければ、幸いです。

今後、記事掲載を予定している都市一覧(順不同)
○ ピサ  ○ ルッカ   ○ アレッツォ   ○ シエナ  ○ サン・ジミニャーノ
○ モンテ・プルチャーノ&ピエンツァ  ○ ヴォルテッラ  ○ マッサ・マリッティマ
○ ピティリアーノ 
2009年4月
菅澤彰子





トスカーナの小都市を旅する
小都市を訪ねる旅 アルキーヴィオへ このページのTOPへ HOME PAGEへ


http://www.japanitalytravel.com
©  JAPANITALY.COM srl - MILANO 2000 All rights reserved.