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イタリア・トラム探索の旅
15 Novembre 2021

Italia, Viaggio in tram

第10回 (最終回) 
シチリア・ヴェネトなどで8都市が新たに復活
ボローニャやピサなど計画中の都市も目白押し  



市川嘉一


●復活の軌道に入ったイタリアのトラム
本連載の第1回目(「トラム・ルネサンス」)が最初にアップされたのは2011年11月。それからちょうど10年が経過した。かなりの長丁場になってしまったが、この間にもイタリアの都市では新たにトラムが復活したり、路線網を広げたりする動きが相次いでいる。持続可能な都市交通に対してのイタリア政府の強力な予算措置に加え、EU(欧州連合)が新型コロナウィルス感染対策の一環として打ち出した回復プロジェクト基金が後ろ盾になっている。トラムの新規導入ではこれまでヨーロッパ主要国の中では後塵を拝していたイタリアでも着実に「トラム・ルネサンス(復活)」の軌道に入ってきたと言えるだろう。

トップの写真:@パレルモ中央駅前に到着した1号路線。すっきりとしたホワイトの外観デザインが特徴=2018年6月8日撮影 

今後の動きも目が離せないだけに連載を続けたいところだが、10回目となる今回でとりあえず最終回としたい。締めくくりとして2000年以降、イタリア国内で新たに復活したシチリア、ヴェネト、サルデーニャなど各州にある8都市(フィレンツェは第2回、第3回で掲載済みのため、その後の続報)を素描風に紹介した後、建設が計画されているボローニャやレッジョ・エミリア、ピサ、トレント、ボルツァーノの各都市にも触れたい。

Aイタリア・トラムのまち一覧           

<シチリア州メッシーナ>
●イタリアで最初の現代トラム

まずは、イタリア最大の島であるシチリアに目を向けてみよう。シチリア島(州)東端の都市、メッシーナ(人口約24万人)。2003年4月にイタリアで初めて車両を含めた現代的なシステムを持つトラムとして復活開業した都市として知られる。

写真下左:Bメッシーナ海峡の海岸線に沿って走るトラム=2018年6月5日撮影
写真下右:C北側終点の州立博物館前に到着したトラム=2018年6月5日撮影             

メッシーナも1917年から1951年まで旧来型のトラムを走らせていたが、その後50年以上、トラムのないまちだった。復活に当たってはシチリアを含めた経済的に困窮している国・地域に対するEU(欧州連合)の財政支援が大きな弾みとなった。
路線は、メッシーナ海峡の海岸線に沿って市の南北地域を結ぶ7.7キロ(電停18)。北側起終点はアンヌンツィアータ(Annunziata)地区にある州立博物館(Museo)で、南側の起終点は路線バスのターミナルがあるガッツィ(Gazzi)地区のボニーノ(Bonino)。真ん中あたりにあるイタリア鉄道のメッシーナ中央駅前にも電停がある。同駅前には南北両方面から来たトラムが半円状に回るループ状の線路が敷かれている。なお、トラムはメッシーナの主力の公共交通であるバス路線網の1つに位置付けられ、系統番号は28番となっている。

写真下:D南側起終点のポニーノに到着した車両は折り返しで博物館方面に向けて出発する=2018年6月5日撮影  
写真下:Eメッシーナ中央駅前の電停には南北両方面から来たトラムが半円状に回るループ状の線路が敷かれている=2018年6月5日撮影  

南側の起終点は2009年4月に1電停間ながら延伸した。アルストム・フィアット製の低床車両であるシティウエイ(Cityway,Serie6000)が走行、全区間の所要時間は40分。

●新市長が就任後に廃止表明したが、踏ん張る
1日当たり約1万人の利用があるというが、世間の耳目を引いたのは2018年6月に選ばれたメッシーナ市の新市長が1年後の2019年6月をもってトラムを廃止したいとの意向を表明したことだ。しかし、これに対し、インフラ・交通省がトラム開業後30年の間、つまり2033年ままではトラムに代わる交通手段のための補助金は一切出さないとする方針を市長側に改めて伝えたことによって廃止計画を思いとどまらせた。交通省は代替案として車両(計15編成を所有)の更新に1100万ユーロを支出するほか、北側のルートを大学まで延伸するために1憶1000万ユーロを出すことを約束した。

写真下左:F平日の夕方に乗った南側方面の車両には数多くの乗客で混みあっていた。奥に見えるブルーのシャツを着た男性はチケットの検札係=2018年6月5日撮影
写真下右:Gメッシーナの街なかにあるドゥオーモ(大聖堂)。その横に高く聳える鐘楼には世界一大きいと言われるからくり時計が仕掛けられ、毎日正午に動き出す=2018年6月5日撮影

ドゥオーモなど観光スポットとして見どころが多いのは、南国情緒豊かなフェニックスの並木が茂る海岸沿いの北側方面だ。終点の州立博物館にはカラヴァッジョがメッシーナ滞在中に描いた2作品が展示されている。 ちなみに、イタリア本島からシチリア島に入る際の鉄道の玄関口であるメッシーナは中世にペストが西アジア方面からヨーロッパに上陸した最初のまちとしても知られる。

<シチリア州パレルモ>
●8年かけて4路線を同時開業

シチリア州の州都パレルモ(人口約67万人)も2015年12月に4路線同時に新規開業した。ここも第2次世界大戦後間もない1947年にいったん廃止されており、68年ぶりの復活となった。2005年に建設事業が承認され、2007年に建設が始まったが、開業までに8年もかかった。

路線距離は計17.5キロ(系統距離は23.3キロ)。運行は路線バスも運行するパレルモ市出資の運行会社、AMAT(Azienda Municipalizzata Auto Trasporti)が手がける。車両はイタリアでは唯一のボンバルディア社製の低床車両「フレクシティ・アウトルック」(Flexity Outlook)を使っている。

4路線のうち、唯一パレルモ中央駅前(南東口)から出ているのは、市南東方面に向かう1号路線(L1)。アクセスとして他の路線よりも乗りやすいので、トラムに乗るのなら、この1号路線をお薦めしたい。

写真下左:Hパレルモ中央駅前の電停=2018年6月9日撮影
写真下右:Iロチェッタ行き1号線の沿線風景=2018年6月9日撮影

1号路線はティレニア海岸沿いの住宅地域を走り、終点はロチェッタ(Roccetta)にある新規開発の郊外ショッピングセンター(SC)。この路線は3年前(2018年)に初めて乗り通したが、走行路はすべて車道に接している専用軌道で、沿線風景も商店街を通ったり、近くにティレニア海が見えたり、なかなか眺めは良かった。路線距離は5.5キロ。電停の数は15、所要時間は22分。

写真下左:Jロチェッタ行き1号線の車内=2018年6月9日撮影
写真下右:K1号線の終点ロチェッタの電停は広大なショッピングセンターの敷地内にある=2018年6月9日撮影

世界的にトラム建設は各地で広がっているが、近年の特徴の1つは郊外でのSC新設など商業開発を目的に路線が敷設されていることだ。パレルモの1号路線もそうした性格を持った路線のようだ。終点のロチェッタの電停は大規模な駐車場とともに広大な商業施設の敷地内にあった。

残る2号路線(4.8キロ)、3号路線(5キロ)、4号路線(8キロ)はいずれも市北部にあるイタリア鉄道の郊外駅ノタルバルトロ(Notarbartolo)を起点に北西部の住宅地域に向かう。ノタルバルトロ駅に行くには中央駅からAMATの路線バス(102系統)を使うのが便利だ。中央駅からノタルバルトロ駅までの所要時間は15分程度。

写真下:L2、3、4号線の起終点であるノタルバルトロ駅前。中央駅前との連絡はトラムも運行している同じAMATの102系統の路線バスが担っている=2018年6月9日撮影

3路線ともノタルバルトロから3つ目の電停であるジョット・ミリアッチョ(Giotto/Migliaccio)までルートは同じだが、同電停から2・3号路線と4号路線は枝分かれする。2・3号路線は終点までそのまま西側に進む、4号路線は南側に針路をとる。4号路線がユニークなのは環状線になっていることで、ジョット電停から上りと下りの線路が分かれ、輪ゴムを伸ばしたように線路が環状になっている。南側地域のポラッチ・カラタフィミ(Pollaci/Calatafimi)が折り返し点になっている。

写真下:M2,3号線と4号線の分岐点となっている電停ジョット・ミリアッッチョ=2018年6月9日撮影

この3路線はいずれも郊外の住宅地域に向かう路線であり、いわゆる観光ルートではない。ただ、トラムの沿線に共通することだが、地元住民らの暮らしぶりを知るにはよいかもしれない。    

●さらなる路線網拡大を計画
パレルモは市の交通計画に基づいてトラム路線のネットワーク拡大を計画している。市の南北地域を貫く2路線の新設や、1号路線など既存路線の延伸だ。これら新設・延伸によって、トラムの路線距離は現在よりも10キロ多い28キロに広がる。先ごろイタリア政府から約5億ユーロの補助金を得ている。

写真下:Nパレルモのトラム路線図=2018年6月9日撮影    


<コラム サルデーニャ島にも州都カリアリなど2都市で開業>

●サッサリはゼロからの新規開業都市、イタリアで唯一の鉄道との並走
シチリアに次ぐ第二の島であるサルデーニャ州でも州都カリアリ(人口約15万人)と拠点都市サッサリ(同13万人)の2都市でトラムが開業した。サッサリは復活ではなく、まったくのゼロからの新規開業都市である点が注目される。

サッサリのトラムは2006年10月に開業。路線距離4.3キロ(電停8カ所)、単線の1系統だけ。最初に開業したサッサリ駅と南西部エミッチクロ・ガリバルディ間(2.5キロ)は街なかを走るが、2009年9月にカリアリ駅から北西部サンタ・マリア・ディ・ピーサに延伸した区間(1.8キロ)はイタリアでは唯一の「トラム・トレイン」(鉄道線路を鉄道車両とトラムが並走)。旧アンサルド・ブレダ社製超低床車両「シリオ」が走るが、線路幅はサルデーニャ鉄道と同じ950メートルのナローゲージ。サルデーニャ鉄道の他区間での新たなトラム・トレインの計画がある。

●カリアリ、鉄道駅までの延伸工事中
一方、カリアリのトラムは2系統あり、路線距離は計12.6キロ(電停13カ所)。サッサリより2年遅い2008年3月に開業。最初に開業した1系統は旧鉄道線路を活用し、市南部レプブッリカ広場と北部モンセラート・サンゴッタルドを結んだ6.6キロ。2015年2月にはさらに北側のポリクリニコまで延伸(1.8キロ)した。同年4月には2系統としてサッサリと同じく「トラム・トレイン」方式でゴッダルドから北東のセッティモ・サンピエトロまでの4.2キロ延伸。路線すべてがナローゲージ(950ミリ)の専用軌道で、大半が単線。イタリアで唯一のチェコ・シュコダ社製の低床車両をサルデーニャ鉄道が走らせている。現在、レプブッリカ広場から西側のカリアリ駅までの延伸工事中。

<ヴェネト州パドヴァ>
●旧市街での鉄輪走行への反対からタイヤ式を導入

イタリアで2000年以降に現代的な車両などシステムを持ったトラムが開業した8都市の中で、パドヴァ(人口約21万人)とヴェネツィア(同26万人)の2都市のトラムはユニークだ。ともに北イタリア、ヴェネト州に位置する両市(ヴェネツィアは州都)は2本のレールの上を走る鉄論ではなく、道路中央にある1本の案内軌条(ガイドレール)に誘導されて走行するゴムタイヤ式を導入した。イタリア語でTranvia su GommmaとかMetrobusなどと呼ばれるゴムタイヤ式トラムは世界を見渡してもまだ珍しい。

写真下:O世界的にも数少ないゴムタイヤ式トラムを採用しているパドヴァ=2012年9月15日撮影 

パドヴァは2007年、ヴェネツィア(正確にはイタリア本土側のメストレ地区)は2010年にそれぞれ開業した。パドヴァでは1907年から1954年までの間、メストレでは1905年から1933年まで昔ながらのトラムが走っていた。パドヴァは53年ぶり、メストレでは実に77年ぶりの復活となった。

写真下:P北側起終点であるポンテヴィゴダルツェーレ行きのトラムが発車するパドヴァ駅前の電停。奥に見えるのが鉄道線路を跨ぐ横断橋=2012年9月15日撮影   

●2009年に鉄道駅を挟んだ南北路線を完成
パドヴァはまず2007年3月にイタリア鉄道(FS)パドヴァ駅と市南側地域のグイッツァ(Guizza)を結ぶ6.7キロ区間で開業、2年後の2009年12月にはパドヴァ駅から北側地域のポンテヴィゴダルツェーレ(Pontevigodarzere)までの区間でも運行を開始した。駅前を挟んで市の南北をつなぐ路線工事が2期にわたったのは、鉄道線路をまたぐ横断橋の建設に時間がかかったためだ(横断橋は2009年10月に供用開始)。

運行機関はイタリア鉄道グループのヴェネト・バスイタリア株式会社(Busitalia Veneto S.p.A)。全路線距離は10.3キロ、電停の数は全部で26カ所ある。平日の日中は6分間隔と高頻度で運行している。所要時間は35分だ。鉄道駅から北側の旧市街では車と一緒に車道を走る併面軌道が多いが、路線全体の7割は車道と分離された専用軌道である。通常のトラムと同様、架線から集電(直流750ボルト)するが、鉄道駅南側にある旧市街の一部区間(Santo-Cavalletto,約600メートル)では架線集電はせずに、蓄電バッテリーで走る。

写真下左:Q南側起終点であるグイッツァの電停近くには大規模な駐車場がある=2012年9月15日撮影   写真下右:R北側起終点であるポンテヴィゴダルツェーレの電停の近くにも路線バスの乗り換えも容易なパーク&ライド駐車場がある=2012年9月15日撮影     

ゴムタイヤ式のトラムは通常のトラムと比べ、坂道に強く急なカーブに対応しやすいとされるほか、レール(=鉄製の車輪が挟み込むガイドレール)が1本のため建設コストも安上がりというメリットがある。ただ、車両を含め特殊なシステムのため通常のトラム車両が走れないこともあり、採用する都市は世界的に少ない。

パドヴァとメストレに採用されたロール・インダストリー社(本社はフランス東部のストラスブール近郊)の「トランスロール」はクレルモン=フェランなどフランスの都市を中心に採用されてきた。パドヴァはロール社のゴムタイヤトラム「トランスロール」を世界で3番目に採用した都市(2番目は中国の都市)で、後述するメストレは4番目の都市だ。ちなみに、ゴムタイヤ式トラムはロール社のほか、トラム製造大手のボンバルディア・トランスポーテーション社が「トランスロール」に対し「TVR」というシステムの名称で製造している。こちらもナンシー、カーンのフランスの2都市が採用しているが、ナンシーではカーブでのガイドレールからの脱輪やモーターの脱落など製造の欠陥により事故が多発し、損害賠償を請求する訴訟問題にまで発展し、ボンバルディア社は製造を取りやめ、開発導入都市は先の2都市にとどまった。

パドヴァは元々、通常の鉄輪式トラムの導入を考えていた。今から30年以上前の1990年に建設プロジェクトが始動したが、その時は通常のトラムを3路線つくる計画だった。だが、古い貴重な建物が立地する旧市街の歴史的都心地区(Centro Storico)に鉄輪式のトラムを通したら、振動などで建物に損害を与えるという強い反対の声が市民の間から上がり、より損害の少ないということでゴムタイヤ式のシステムの導入を決めたという。このあたりの古都ならではの事情はフィレンツェによく似ている。

写真下:S路線全体の7割が専用軌道になっている=2012年9月15日撮影  

●パドヴァ駅前から乗車、見どころは南側の旧市街
パドヴァはイタリアで最も有名な聖地として国内外から数多くのカトリックの巡礼者が集まるサンタントニオ聖堂をはじめ、ジョットのフレスコ画で有名なスクロヴェーニ礼拝堂などいぶし銀の建物が集中する一級の芸術・文化都市。ヴェネト州の中ではヴェネツィアに次いで訪れたいまちだ。そんな古都の鉄道の玄関口であるパドヴァ駅前にトラムが走っているというなら、乗らない手はないだろう。

写真下左:21 ジョットのフレスコ画で知られるスクロヴェーニ礼拝堂もトラムの沿線から近い=2012年9月15日撮影
写真下右:22 パドヴァ駅前広場を出ると、道路上には上下線それぞれ1本のガイドレールが敷かれているのに気づく=2012年9月15日撮影影      

パドヴァ駅を降りて駅前広場に出ると、右側にシルバーのレールが光る電停が見える。普通のトラムとは違って、道路上にはレールは2本ではなく、真ん中に1本しか敷設されていない。車両を誘導する役割をするガイドレールだ。そこにブルーの車体の3車体連接のトラムがするすると静かな調子で入ってきた。

車体の長さは25メートル。幅は2.2メートル、高さは2.9メートル。見た目には車体は通常のトラムと何ら変わらない。普通なら2本あるところのレールが1本しかないことを別にすれば、パドヴァにも普通のトラムが走っていると思ってしまうはずだ(ゴムタイヤも裾の長い超低床車両のため見えない)。

沿線の見どころは鉄道駅前の電停(Stazione FS)から教会など有名な建築物が集まる旧市街を走る南側だろう。駅前広場を左に進み、間もなくして右折するとポポロ大通り(Corso del Popolo)、ガリバルディ大通り(Corso Garibaldi)と通りの名前を変えながら大通りを直進する。大通りの左側にはスクロヴェーニ礼拝堂のある広大なアレーナ庭園を眺めながら、旧市街方面に向かう。途中、目抜き通りのローマ通り(Via Roma)と並行する通りを走るが、右側にはカブール広場、パドヴァ大学、ラジョーネ宮や市庁舎のあるエルベ広場、さらにはドゥオーモ・洗礼堂と見逃せないスポットが集中する。さらに通りを左にゆるやかに旋回すると、サンタントニオ聖堂の威容が迫ってくる。

写真下:23)中心部の沿線にあるカブール広場にはトラットリアなど様々な店舗が張り付き、多くの市民らで賑わっている=2012年9月15日撮影

●計8路線の大規模路線網を計画、当面は東西路線など2路線に注力
パドヴァも将来、トラムを計8路線からなる大規模なネットワーク(総路線延長83.5キロ、電停数は計69)に広げるという野心的な計画を持っている。現実的には難しいと思うが、2026年末の完成を目指している。その核となるのが2号路線と3号路線だ。
2号路線はパドヴァ鉄道駅を挟んで市東側のブーサ・ディ・ヴィゴンザ(Busa di Vigonza)と西側のルバーノ地区(Rubano)を結ぶ東西路線18.3キロ。 3号路線はパドヴァ鉄道駅と市南東のヴァルタバロッツォ地域(Valtabarozzo)を結ぶ路線。建設費は5000万ユーロ。1号線南側終点に近いグイッツァ(Guizza)にある車両基地の拡張(500万ユーロ)を含めた3号路線の工事入札は既に行われており、2022年早期の着工を目指している。

<ヴェネト州ヴェネツィア>
●計2路線、2015年には本島のローマ広場に延伸

一方、パドヴァと同じフランス・ロール社製のゴムタイヤトラム車両(名称はトランスロール)を導入したヴェネツィアは2004年に着工。最終的に2路線からなるネットワークを構築した。

写真下左:24)本土側のメストレからヴェネツィア本島に入る際のターミナルになっているローマ広場にトラムの電停がある=2016年8月27日撮影
写真下右:25)本土側(メストレ)とヴェネツィア本島を隔てるラグーナ(潟)に架かる長大なリベルタ橋を鉄道と並行して走るゴムタイヤ式トラム=2016年8月27日撮影

まず2004年にメストレ地区北東側のモンテ・チェーロ・ファヴァーロ(Monte Celo Favaro)と同地区西側のカップチーナ・セルナーリア(Cappuccina Sernaglia)を結ぶ6.3キロ区間の工事に着手、2010年12月に開通させた。その4年後の2014年9月にはカップチーナから南西方向のマルゲーラ(Marghera)まで延伸(延伸区間3.7キロ)。さらに、2015年9月には念願だったメストレ中心部から、ラグーナ(潟)に架かる長大な車道橋、リベルタ橋(Ponte della Liberta)を渡ってヴェネツィア本島のバスターミナルであるローマ広場(Piazza Roma)までの区間が開業した。

写真下:26)1系統と2系統が接続するターミナルになっている電停メストレ・チェントロ=2016年8月27日撮影       
写真下::27)地下構造になっているFSメストレ駅近くの電停=2016年8月27日撮影 

ローマ広場からモンテ・チェーロまでの区間が1系統(T1)、マルゲーラから、1系統と接続するメストレ・チェントロ(Mestre Centro)までの区間は2系統(T2)と区分される。2系統のルート上にはイタリア鉄道のメストレ駅と接続する電停(Stazione FS)がメストレ・チェントロから南方向に5番目のところにある。ただ、電停は地下構造になっており、鉄道駅からもやや遠いところにあるので、観光客らには見つけくいだろう。

写真下左:28)各電停の上屋にはトラムがあと何分で到着するかを示す到着時間案内の電光掲示版が備え付けられている=2016年8月27日撮影

とはいえ、ヴェネツィアの本島にまでトラムの線路が延びたのは画期的なことである。2系統とも基本的に地元住民らの生活路線であり、沿線にこれといった観光スポットはないが、イタリアの地方都市の風情をうかがえる路線と言えるだろう。1系統の所要時間は39分(電停23カ所)、2系統の所要時間は23分(同14カ所)。2系統を合わせても総路線距離は19キロとコンパクトだ。何度目かのヴェネツィア滞在で、しかも時間があるならば、イタリア人の普段着の生活を見にユニークなタイヤトラムに乗ってみるのも楽しいだろう。

写真下左:29)リベルタ橋で故障したバイクが前方を塞ぎ、進めなくなったローマ広場行きトラム=2016年8月27日撮影
写真下右:30)緊急に呼び寄せた代行バスに全員移されたトラムの乗客=2016年8月27日撮影  

<ロンバルディア州ベルガモ>
●廃止れた郊外鉄道の線路を活用したライトレールとして復活

北イタリア、ロンバルディア州にある小さな古都ベルガモ(人口約12万人)にも伝統的なトラムではないが、廃止された郊外鉄道の線路を利用したライトレールが走っている。

ベルガモのライトレールは2009年6月にベルガモ中央駅と北東部の渓谷地域アルビーノ間を結ぶT1路線(12.5キロ)として開業した。1953年まで走っていた鉄道線路などを活用したものだ。複線にしたほか、6駅を改良し、新たに10駅を設けた。ベルガモと郊外住宅地域を結ぶ生活路線で、街なかを走るトラムではない。車両は旧アンアサルド・ブレダ社製で全長約30メートル、4車体連接の超低床車両「シリオ」。

写真下左:31)FSベルガモ中央駅を出て右側にあるトラムの電停=2015年7月29日撮影
写真下右:32)終点のアルビーノは市北東部の長閑な渓谷地域にある=2015年7月29日撮影

ベルガモでは2番目のライトレール路線も実現に向けて大きく動き出した。北西部のアルメ地域とベルガモ駅を結ぶT2路線である。この計画路線もEUのコロナ回復計画(EU Covid Recovery Plan)に基づく資金援助を受ける。2019年に1憶7800万ユーロの補助金を得ていたが、建設資金として十分ではなかったという。

路線距離は9.9km。電停の数は16カ所で、うちベルガモ中央駅、ボルゴ・パラッツオ(Borgo Palazzo)、サン・フェルモ(San Fermo)の3つの電停はT1路線と共有するが、その後は北西方向に分岐し、1966年に廃線になったブレンバーナ渓谷電気鉄道(La ferrovia Elettrica di Valle Brembana)の路線跡を走る。

<その後のフィレンツェ>
●1系統、2018年に大学病院まで路線延伸

イタリア中部、トスカーナ州の州都フィレンツェ(人口約38万人)のトラムに関しては、この連載記事の2回目(2012年1月)と3回目(2016年9月)の2回にわたり紹介したが、その後、路線の新設や延伸の動きがあったので、ここでもう一回簡単に報告したい。
フィレンツェにはT1(1系統)とT2(2系統)の2路線がある。路線距離は計16.8キロ。このうち、T1路線はフィレンツェの鉄道の玄関口であるサンタ・マリア・ノヴェッラ(SMN)駅と西側の郊外住宅都市スカンディッチ市を結ぶ路線として、2010年2月に開業した(フィレンツェのトラムとしては52年ぶりの復活)。

そして、T1路線は2018年8月にサンタ・マリア・ノヴェッラ駅前から市北東部にあるフィレンツェを代表する大規模病院でフィレンツェ大学医学部の附属病院でもあるカレージ病院(Careggi)に延伸した。この延伸区間は当初、T3路線と呼ばれていた。2014年4月に市議会が計画を承認後、2015年に着工、2018年7月に開業した。

写真下右:33)フィレンツェのT1路線の北側起終点であるカレージ病院=2019年9月16日撮影

運行ルートはノヴェッラ駅前の電停(Alamanni-statione)から東側に沿って駅前広場を半円周形に回り、ヴァルフォンダ通り(via Valfonda)を北上。スタトゥート(Statuto)、リフレディ(Rifredi)という2つの人口が密集した住宅地域を通り、カレージ病院(Careggi)の正面エントランスにたどりつく計4.1キロ(電停数10)だ。この大学病院に隣接してフィレンツェ大学の理学系の学部もある。

現在のフィレンツェのトラム沿線の多くは住宅街で、これといった観光スポットはないが、1系統のSMN駅から病院方面2つ目のフォルテッツァ(Fortezza)電停の前には16世紀築造の重厚な要塞(バッソ要塞)が聳える。病院近くのダルマツィア電停近くにある広場には平日でも野菜・果物や花などを売る市が立ち、風情があっていい。

写真下右:34)T1路線のサンタ・マリア・ノヴェッラ駅前電停から東側に2つ目の電停フォルテッツァには16世紀築造の重厚なバッソ要塞が聳える=2019年9月16日撮影

現在の延伸区間はこれら病院・文教地区を通るだけでなく、人口密集地域の移動を支えたり、ノヴェッラ駅前でT2路線とつながることで市内各地域と結ばれたりすることから、フィレンツェのトラム・ネットワークの根幹部分を担う路線と位置付けられている。

●2系統は2019年に空港への新規路線として開業
一方、中心部と空港を結ぶT2路線は2015年4月に着工、2019年2月に開業した。ノヴェッラ駅から南側の旧市街寄りにあるウニタ(=イタリア統一)広場(Piazza dell’Unita d’Italia)を出発点にピサ方面に向かう幹線鉄道の下を潜り、グイドーニ大通り(Viale Guidoni)を抜けて、北西部にあるペレトーラ空港(Aeroporto Peretora)に向かう計5.3キロのルート(電停数12)だ。

写真下:35)T2路線の起点であるウニタ(=イタリア統一)広場。左奥に見えるのはFSサンタ・マリア・ノヴェッラ駅=2019年9月16日撮影 
写真下:36)T2路線の北側起終点であるペレトーラ空港=2019年9月16日撮影 

●1系統は東側への枝線も新設、サン・マルコ広場に延伸
T1路線をめぐる新たな動きとして注目されるのは、ノヴェッラ駅前の電停から東側(カレッジ病院行き)方向に2カ所目の電停、フォルテッツァ(バッソ要塞)から東側に分岐する枝線の新設計画だ。バッソ要塞から右折しラヴァニィーニ大通りを東進、リベルタ広場(Piazza Liberta`)を経由した後に南下し、サン・マルコ広場(Piazza San Marco)に向かうルートである。復活したとはいえ、フィレンツェのトラムは現在、2つの路線とも郊外へ向かっており、この延伸により、初めて中心部の内部を走るルートが生まれることになる。延伸区間には新たに電停を6カ所設けるという。

サン・マルコ広場はフィレンツェの公共交通を運営するATAFの路線バスのターミナルになっているが、この一角にあるサン・マルコ修道院には有名なフラ・アンジェリコのフレスコ画「受胎告知」などがある美術館がある。このT1路線の東側延伸区間は開業後には観光ルートにもなるだろう。

写真下:37)T1路線の電停フォルテッツァから東側に分岐する枝線の線路=2019年9月16日撮影


●さらなる路線新設・延伸の動きも急展開
フィレンツェではこのほか、さらに3つ以上の路線新設・延伸の動きも急展開している。1つはノヴェッラ駅前からT1路線を西側終点のスカンディッチ(Scandicci)方面に進んで最初の電停、プラート門・レオポルダ(Porta a Prato /Leopolda)から分岐し、北西地域のレ・ピアージェ(Le Piagge)に向かうT4路線の新設で、路線距離は6.3キロ。 このT4路線は電停のプラート門近くにあるFS駅から、市東部のカッシーネ(Cascine)地区やバルコ(Barco)地区などを通り、ピサ方面に向かうイタリア鉄道(FS)のローカル鉄道(「カッシーネ・レオポルダ線」)に4km区間乗り入れるルート。既に2011年にFSとフィレンツェ市との間でプロジェクトの実行で基本同意している。

このほか、T2路線の延伸として、ペレトーラ空港から北部方面のセスト・フィオレンティーノ(Sesto Fiorentino)に向かう7.4キロの路線や、レ・ピアージェからカンピ・ビセンツィオ(Campi Bisenzio)に向かうT4路線の5.4キロ延伸も計画している。市はこの2つの延伸のために4億5500万ユーロの建設財源を充ててもらえるよう、インフラ・交通省に求めている。

写真下:38)フィレンツェのトラム路線図(計画路線を含む)   

<導入計画都市も目白押し>
●中央政府とEUの強力な財政支援が背景に

トラムの復活を目指す都市も急速に増えている。その背景にあるのがイタリア中央政府やEUの強力な財政支援だ。
イタリア政府は近年、持続可能な都市交通プロジェクトへの支援に力を注いでいる。その最初の契機になったのが、2018年12月に公表した「持続可能な移動に向けた国家戦略プラン」(Piano Strategico Nazionale della Mobilita` Sostenibile) だった。これに基づき、2019年国家予算で2033年までの予算措置を保障する法律が制定された。

元々は2019年半ばまでに財源保障を申請した自治体が対象だったが、その後、2021年1月まで申請期間が延長された。それを後押ししたのがコロナ対策の1つとしてEUが打ち出した総額7500万ユーロの支援事業「Covid-19回復パッケージ」だった。イタリア政府の支援額にこのEU基金が上積みされたことで、予算措置が充実した。

こうした強力な財政支援を追い風に、トラムの復活に手を挙げる都市が相次いだのだ。以下、紹介するボローニャ、レッジョ・エミリア、ブレーシャ、ピサ、トレント、ボルツァーノ、コセンツァ(カラブリア州南部の都市)などだ。ちなみに、コセンツァを除けば、財政が比較的豊かな北・中部地域に集中している。

●ボローニャは悲願実現へ4路線、計57キロの大規模路線網を計画
新規トラム路線を計画するイタリアの都市の中でも最も野心的な計画を打ち出したのが、エミリア・ロマーニャ州の州都であるボローニャ市(人口約39万人)だ。
同市は2018年11月に「持続可能な移動に関する都市計画」(PUMS,Il Piano Urbano della Mobilita` Sostenibile di Boligna)を採択。この中でトラムを持続可能な移動を実現するための有力な手立てであるとともに、沿線価値など都市のクォリティーを高めるものと定義づけたうえで、2030年までに4路線、計57キロの大規模な路線網を構築する方針を打ち出した。1号路線は2026年の開業を目指している。ボローニャのトラムは1963年に廃止されたので、約60年ぶりの復活となる。

写真下右:39)路線バスが続々と走るボローニャ市中心部のリゾーリ通り。奥に見えるのが塔=2018年4月19日撮影
写真下右:40)ボローニャの街なかにトラムが走っていた当時の写真。
写真下:41)街なかの路面に敷き詰められたまま残っているトラムの線路の一部=2018年3月19日撮影

翌12月にイタリア政府のインフラ・交通省に1号路線の建設財源(5億1000万ユーロ)の調達を申請した。そして、翌年の2019年12月に同省から財源調達が認められたことで、トラムの建設が実現に向けて大きく動き出した。ボローニャ市はこれまでにも幾度となくトラムの導入計画を打ち上げてきたが、その都度挫折。今回、やっと悲願がかなったと言える。

PUMSによると、まず1号路線として最初に手を付けるのは「レッドライン」(Linea Rossa)。市西部地域のボルゴ・パニガーレ(Borgo Panigale)のエミーリオ・レピド・ターミナルと、北東部地域のカーブ(Caab)のボローニャ大学農学部(Facolta` di Agraria )を結ぶ16.5キロ(電停数34)。このうち、1.5キロ部分は北東部側の終点に近いミケリーノ(Michelino)地区の見本市会場への枝線となる。路線の大半は専用軌道で、沿線にはイタリア鉄道のボローニャ中央駅(FS Stazione Bologna Centrale)と接続する電停も置かれる。

写真下:42)ボローニャの新規トラム路線図 

ボローニャの東西地域をつなぐ基幹軸とも言えるルートで、沿線には市西部のマッジョーレ病院や、ボローニャのシンボル拠点であるマッジョーレ広場近くの商店街のウーゴ・バッシ通り(Via Ugo Bassi)、マッジョーレ広場とボローニャ中央駅を結ぶ最大の目抜き通りであるインディペンデンツァ通り(Via dell’Indipendenza)、中央駅、見本市地区などボローニャの重要な施設や通りなどがある。 既にインフラ・交通省から建設資金(5億900万ユーロ)の交付を受けたことにより、2022年末に着工、2026年末の開業を目指している。4〜5分ヘッドという高頻度間隔で運行、全路線区間の所要時間は52分を見込んでいる。全長32〜42メートルの長大編成の低床連接車両(収容能力220〜290人)を26編成調達。歴史的中心地区(centro storico)では架線レスのバッテリー充電により走る。先ごろ、デザイン・建設工事の入札が始まった。当初、平日1日当たり8万人、4路線が完成した暁には同10万人の利用を見込んでいる。 財源調達はまだ確定していないが、2番目以降の路線ルートも決まっている。2番目の路線は市北部のコルティチェラ(Corticella)と市中心部のドゥエ・マドンネ車庫(Deposito Due Madonne)を結ぶ「グリーン・ライン」(Linea Verde)。路線距離は7.4キロ(うち1.5キロはレッドラインと併用)、電停数は18カ所(うち4カ所はレッドラインと同じ)を予定している。

写真下:43)ウーゴ・バッシ通り=2018年5月5日撮影  写真下:44)インディペンデンツァ通り=2018年3月24日撮影

3番目の路線は「イエロー・ライン」(Linea Gialla)として南部のラスティニャーノ(Rastignano)と西部のカステルデボーレ(Casteldebole)をつなぎ、最後の4番目は「ブルー・ライン」(Linea Blu)の名称で西部のカザレッキオ(Casalecchio)と東部のサン・ラザーロ(San Lazzaro)を結ぶ路線となる。 4路線とも市の東西を結ぶ13系統、19系統など数多くの乗客が利用する現行の主要な幹線バス路線を考慮して決められた。4路線の利用客数は開業後に1日当たり30万人、ボローニャ市内の公共交通の利用客数の21%を占めると予測されている。

●レッジョ・エミリアも南北縦断路線を計画
ボローニャと同じエミリア・ロマーニャ州に属す中規模都市レッジョ・エミリア市(人口約17万人)も野心的な計画を進めている。市内の南北を結ぶ14.5キロ(電停数29)のトラムを建設する計画で、イタリア政府に対し建設財源の調達を申請している。

同市が2021年1月に発表した同市の持続可能な交通に関する都市計画(PUMS,Piano Urbano Mobilita` Sostenibile di Reggio Emillia) によると、南部住宅地域のリバルタ村(Villa Rivalta)と、工業団地や高速鉄道駅(Stazione Mediopadana AV)、高速道路(Autostrada)インタチェンジがある北部地域のマンカサーレ村(Villa Mancasale)を結ぶ路線で、途中、イタリア鉄道のレッジョ駅(Stazione FS-Reggiane)や市の中心街(centro)も通る。実現すれば、同市にとって公共交通の大動脈的な路線になる。 車両(16編成)を含めた投資額は2億8200万ユーロを積算。利用客数は当初、1日当たり2万2000人、中長期的には3万人を想定し、年間利用客数650万人のうち22%に当たる140万人はマイカー利用者からの移転と見込んでいる。

●ブレーシャ、地下鉄に加えトラムを2路線建設へ
ロンバルディア州でも新たなトラム都市が誕生しそうだ。ミラノから東に85キロ、ロンバルディア州の拠点都市の1つであるブレーシャ(人口約20万人)。既に無人自動運転の地下鉄(La metropolitana)を2013年に開業したが、新たに2つのトラム路線を市内に建設する。ブレーシャ市出資の公共交通会社(Brescia Mobilita`)とイタリア鉄道グループが既に2018年3月に建設で同意している。

1つは北西部のペンドリーナ(Pedolina)と南西部の展示場を結ぶ11.6キロ(電停は計24)。主に路線バスのルートをたどる。地下鉄のFSブレーシャ駅(Stazione FS)とサン・ファウスティーノ駅(San Faustino)の2駅と接続する。2029年3月の開業を目指している。 さらに、西部地域のヴァッレカモニカ(Vallacamonica)と、東部地域のボルナータ渓谷地域(Valle Bornata)を結ぶ2号路線も計画されているが、資金面の裏付けはまだない。

●ピサは鉄道駅と病院を結ぶ4.4キロの路線
トスカーナ州の中小都市ピサ(人口約9万人)もトラムの建設計画を打ち出している。2020年9月にインフラ・交通省に補助金申請書を出した。建設費は1億2500万ユーロを見込んでいる。同市のトラムも1952年に廃止されており、実現すれば約70年ぶりの復活となる。

今回新設するのはFSピサ駅と市内東側地域にあるチザネッロ病院総合医療センター(Presidio Ospedaliero di Cisanello)を結ぶ4.4キロ区間(電停数13)。トラムの建設に伴い、市内中心部を流れるアルノ川の橋の1つ、ヴィットリア橋(Ponte della Vittoria)をトラム・自転車専用橋に造り直す。また、終点となる病院の電停が置かれる計画の駐車ゾーンは多機能型のパーク&ライド拠点として生まれ変わるという。投資額は1憶2500万ユーロ。

写真下:45)トラムの線路が敷設されているピサ中央駅前通りの完成予想図 

●トレントも復活、中心部と北側郊外を結ぶ8キロ新設へ
北イタリア、トレンティーノ=アルト・アディジェ州(南ティロル州)の州都トレント市(人口約12万人)もトラム路線の新設計画を採択した。市中心部と北部郊外のガルドーロ(Gardolo)を結ぶ計8キロで、17の電停を設ける。トレントも1960年までゲージ幅1000ミリの郊外トラムを走らせていたが、実現すればそれ以来の復活となる。
主なルートとしてボルツァーノ通り(Via Bolzano)とブレンネッロ通り(Via Brennero)を走るが、ブレンねっろどおりは4車線のうち2車線をトラムの走行空間と歩道・自転車レーンの拡張に充てるほか植栽をする道路環境の改善に努めるという。また、市中心部には車両の向きを変えるためのループ線を設ける。中長期的には南側地域に路線を延ばす計画を持っている。

●ボルツァーノは鉄道駅からY字型に2路線、歴史地区では架線レスに
同じトレンティーノ=アルト・アディジェ州にある拠点都市ボルツァーノ(人口約11万人)も2路線からなるトラムの建設計画を公表した。
ボルツァーノ駅(Stazione Bolzano)から市西部にある病院までを結ぶL1路線と、同駅と市南西部のポンテ・ダディジェ駅(Stazione Ponte dAdige)をつなぐL2路線の2路線で、計7.2キロ(電停17カ所)。中央駅から途中の電停ビヴィオ・メラーノ(Bivio Merano)までは線路を共有、ビヴィオ・メラーノから線路は文字通り、分岐(Bivio)する。いわば、Y字型に伸びた東西路線だ。
L1はピーク時には10分ヘッドで運行、路線全体の所要時間は19分。L2は30分間隔で全路線を21分で走らせる。走行する道路の交差点では優先信号を設け、交通渋滞に巻き込まれないようにする。また、ボルツァーノ駅からヴィットリア広場(Piazza della Vittoria)までの1.3キロの歴史的都心地区(centro storico)は街並み景観を維持するために架線レスの区間として蓄電式のバッテリーで走る計画だ。
市長と州知事は2018年8月にトラム導入に向けたフィジビリティ調査実施で合意した。初期投資額は1億9200万ユーロを想定。うち、建設費は1億2500万ユーロ、車両購入費は2500万ユーロと試算している。 ボルツァーノでも第2次世界大戦後の1948年までトラムが街なかに走っていた。

<コラム 旧来からあるトラム都市>

●ナポリ、計3系統のみに、最近まで長く運休中
ナポリのトラム(人口約97万人)は1899年に電化開業したが、その後、路線網は縮小し、現在は3系統のみ。路線距離は10キロ(系統距離は19.9キロ)。
観光で利用しやすいのは、北東部のポッジョレアーレと南西部のヴィットリア広場を結ぶ1系統(6.5キロ)だろう。ナポリ中央駅前のガリバルディ通り、バスターミナルのある交通の要衝ムニチピオ広場(コロンボ通り)を経由し、ヌオーヴォ城や王宮などナポリ湾沿いを走る。ガリバルディ通りと交差するヌオーヴァ・マリーナ通り(カルミネ電停)からは4系統と並走する。 2013年にポッジョレアーレから1.3キロ北側に延伸されたが、同区間を含め、ほぼ全路線が車両基地近くの道路工事が原因で最近(2020〜21年)まで長い間運休になっていた。オレンジ色の古い単車とホワイトの超低床車両「シリオ」が走る

●ボルツァーノ(ソプラボルツァーノ)
ボルツァーノ(11万人)は1907年に「レノン鉄道」(Ferrovia del Renon。ドイツ語名は「リトナー鉄道」Rittner Bahn)と呼ぶ郊外トラムを開業。路線距離は6.6キロ。かつてボルツァーノ市中心部の広場から路面電車として走った後、ドロミティの山々に囲まれたレノン高原までラック式鉄道(2本のレールの間に歯型のレールを敷設)として登っていたが、1966年の脱線事故後、高原(ソプラボルツァーノ〜コッラルボ間)だけを走る電車に。開業年に製造の木造車両は今なお走る。先に述べたように、ここにきて中心部などを走るトラム復活の計画も進められている。

●トリエステ
トリエステ(同20万人)のトラムは1902年に開業した。街なかのアルベルゴ(ホテル)前のオベルダン広場と郊外のオピチナ地区を結ぶ5.2キロの路線。青と白のツートンの趣のある単車が走る。途中にある距離にして800メートルある急こう配を専用のケーブルカー・ユニットに押されて進む。車窓からときおりアドリア海も見える。2016年に衝突事故を起こして以来、運休を続けており、復活が待ち望まれる。

著者プロフィール
市川 嘉一 Kaichi ICHIKAWA

1960年生まれ。都市・交通ジャーナリスト。1985年日本経済新聞社入社。経済解説部記者、地方部次長、産業地域研究所主任研究員として国内外にわたる数多くのまちづくりや都市交通の現場を取材。2018年に退社後は都内のまちづくり系シンクタンクで理事を務めるとともに、まちづくり、都市交通、イタリア都市をテーマにフリーランスのジャーナリスト活動を続けている。国の交通政策審議会地域公共交通部会臨時委員など政府・自治体関係の審議会・委員会委員も数多く歴任。博士(学術)。埼玉大学工学部非常勤講師。『交通まちづくりの時代―魅力的な公共交通創造と都市再生戦略』(単著)など著書・論文多数。2020年から月間専門誌「運輸と経済」にコラム「交通時評」を連載。先ごろ、公益財団法人日伊協会の会報誌「CRONACA(クロナカ)」2021年春号に特集記事「イタリアのトラム新時代」を執筆。





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