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海と風の町 トリエステに生きる
15 Maggio 2018

第1回 
トリエステと僕とコントラバス   



 
原田光嗣



皆さんは、「一目ぼれ」をしたことがありますか?ドラマや漫画ではよく見るけれども、自分ではなかなか・・・といった方が多いのではないでしょうか。しかし、異性に一目ぼれをしたことはなくても、物や場所にまで対象を広げてみると、皆さん経験があるのではないかと思います。僕の場合は、トリエステに一目ぼれをして、この街の坂道の上に住み続けています。

トップ写真:@トリエステの中央広場であるイタリア統一広場でのコンサートにも出演  
写真下左:Aコントラバスを弾く筆者 写真下右:Bトリエステの中央広場を海から臨む

●きっかけはコントラバス
僕はコントラバス奏者です。日本でもアマチュアとして活動していたのですが、2004年の9月に、ステファノ・シャシャというマエストロの来日コンサートを聴きに行く機会がありました。以前から繰り返しCD を聴いていた憧れの存在です。僕の恩人でもある年上の友人の計らいでマエストロと直接お話できる機会も多く、その時に「私が住んでいるトリエステに来るなら歓迎するよ!」と言っていただきました。 今なら分かりますが、イタリアの方はしょっちゅうこのフレーズを言いますし、社交辞令だったのでしょう。しかし世間知らずだった僕はその言葉を真に受け、同じ年の11月に卒業旅行としてイタリア行きを企画し、しっかりトリエステも目的地に加えたのでした。

写真下左:C市街をほぼ真上から見下ろす。高低差があるため坂道も多い 写真下右:D海からすぐに上り坂になり、斜面に家が並ぶ。   

●初めてのトリエステ
イタリア到着後四日目、その日の移動はフィレンツェから直接トリエステへ。長い電車移動でしたが、初めての海外旅行の興奮と、再び憧れのマエストロと会える!という期待とで高まる気分のまま、いよいよトリエステのひとつ手前の駅モンファルコーネを出発。まだ早い午後の時間帯、車内にはほとんど乗客がいませんでした。しばらく殺風景な景観の中を電車は進み、短いトンネルを通りすぎました。 そのとき僕の目に飛び込んできたのが、右手の車窓いっぱいに広がる、午後の光を受けてキラキラ輝く真っ青なアドリア海だったのです!神戸で育った僕は、反射的に左手の窓を振り返りました。するとそこには、窓に迫りくる岩の壁がありました。トリエステは神戸と同じように、海と山とに挟まれた街だったのです。これが、僕がこの街に一目ぼれした瞬間でした。

写真下左:E卒業試験のひとコマ。音楽院の建物は歴史ある重厚な造り   写真下右:F試験終了後、マエストロと卒業を祝って乾杯

この旅行中に、この街に留学して、マエストロと音楽の勉強をしようという決意が生まれました。日本に帰ってから一年間は仕事をして資金を貯め、イタリア文化会館を通してトリエステのコンセルバトリオ(国立音楽院)へ出願して入試に合格し、2006年10月から晴れてトリエステでの留学生活が始まりました。

●少しずつ、トリエステに根付く
若かったですし、生まれて初めての一人暮らしだったこともあったのでしょう。特に文化のギャップを感じることもなく、イタリアでの生活に馴染んでしまいました。もちろん最初は学校での勉強に忙殺されていましたが、イタリア語を覚えると少しづつ演奏のお仕事を頂ける機会も増え、1965年にトリエステで発足した伝統ある室内オーケストラ(フェルッチョ・ブゾーニ室内管弦楽団)のメンバーになったことで、CDの録音に参加したりヨーロッパ各地での演奏旅行に出かけることも増えました。

写真下:Gトリエステ劇場の小ホールにて  
写真上:Hウィーンの楽友協会にて

今年の10月で、トリエステに住みだしてから12年が経とうとしています。今では音楽活動に加えてイタリア語の検定(CILSのC2)も取得し、翻訳や通訳の仕事もしつつ生計を立てています。そして昨年、長い間お付き合いしていたトリエステ出身の女性と結婚し、ますますトリエステとの縁が深まったのを感じています。結婚式の証人は、僕を最初にトリエステへと招いてくれたマエストロにお願いしました。これで、僕の一目ぼれは、ひとまずハッピーエンドを迎えた訳です。

写真下左:I中央広場の市役所で結婚式を挙げました   
写真上左:Jイタリア語を活かし、日本文化の講演などもしています。 写真上右:K日本でイタリア流の音楽を紹介することも増えました

●僕にできることで、少しずつ恩返しを
これからは、僕を懐深く迎え入れてくれたトリエステの街やイタリア音楽の魅力を、日本に発信していければと思っています。次回からは僕がますます惚れ込んでいるトリエステの魅力を、順を追ってご紹介しますので、どうぞお楽しみに!

写真上:L中央広場から伸びる突堤は絶好の散歩道



海と風の町 トリエステに生きる案内人プロフィール
原田光嗣 (Harada Mitsugu)

イタリア、トリエステ在住。コントラバス奏者、通訳・翻訳家、日本語教師。2006年に渡伊、イタリアをはじめアムステルダム、サンクトペテルブルク、ウィーンなどヨーロッパの主要都市にて演奏、CD録音にも多数参加。CILS Quattro(C2)取得。スタジオ・ジブリの映画や村上春樹に関する講演歴あり。趣味は読書。村上春樹、カルヴィーノ、ピランデルロ、いしいしんじあたりが好きです。ブログ「コントリ!」
ブログ「コントリ!」:contrinew.exblog.jp




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